林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
44 巻, 1 号
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  • 原稿種別: 表紙
    1998 年 44 巻 1 号 p. Cover1-
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1998 年 44 巻 1 号 p. Cover2-
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 林業経済学会幹事会
    1998 年 44 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 宣子
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    林家の林業生産活動が活発な宮崎県耳川流域において,90年代における林家の存在形態を集落,山林保有規模,家族形態別に分析を行った。「いえ」が直系家族を維持し,世代継承がスムーズに行われている集落では,小規模林家層の自営性は低下しているものの,集落全体として林業・森林管理の担い手が確保され,中規模林家で世代交代を契機に新たな複合作物の導入や素材生産の低コスト化といった積極的な経営対応がみられた。また,30歳代の男性後継者や40,50歳代の女性(姑世代)達が,直接都市住民と結びつくような市場経済に対抗的な行動を90年代になって様々な形態で行っている。一方,土木・建設等の不安定兼業化が進み,「いえ」の存続が困難化している集落では,皆伐後の再造林放棄や挙家離村による不在村化の進行,高齢化による林道維持の困難化など,林家だけでは森林管理を担いきれない事態が広がっている。こうした中で,地域組織とりわけ地方自治体の役割が増しており,林家経営の安定化策や直系家族(特に若嫁世代)の定住条件の向上等の山村対策,及び森林の公的管理政策の両面が重要となっている。
  • 三井 昭二
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    これからの森林管理においては,地方分権に裏づけられた公的管理の方向が大きな流れとして登場せざるをえないだろう。その際に,森林管理主体によるさまざまな努力や試みにも配慮していく必要があろう。これらの主体においては,単なる近代化を追い求めるのではなく,<伝統>と<近代>との織りなす調和をみいだしていくことが大切である。大規模林業経営のなかには,イエをベースにして地域,環境,国際情勢に配慮しながら,経営の近代化を図っているものもある。伝統的コモンズである入会林野は,一般に衰退しているなかで,伝統と近代のはざまでの変容もみられる。さらに,都市とのかかわりのなかから,<新しいコモンズ>ともいえる森林ボランティアの活動や新しい「入会地」の発想がうみだされている。いっぽう,森林管理をとりまく政策状況も,地方分権化は不発におわっているが,林政審答申では地域森林計画等の策定過程への住民参加がうちだされるなど,新しい展開がみられる。また,森林管理上において栓桔となっている近代的土地所有に対しては,利用を優先するたあに根本的な制度の変更が必要になってきている。
  • 飯田 繁
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    日本における森林管理問題は,日本林業を推進することによって目標を達成するか,林業経営に依存した方法では森林の管理ができないと見るのか,にかかっている。そのことは,日本の森林所有者が国際化の中で林業家としてやって行けるのか,ということでもある。日本の私有林経営は,多くの研究者が認定する如く,資産保持的である。この性格を変更することはほとんど不可能であり,それを前提にかんがえていかねばならない。国有林の解体状況,自治省の林業への参加,環境問題の深化,こうした問題を抱えるとき,2,500万haの森林を林業政策(産業政策)でフォローするのか,社会政策で考えるのか,地域政策で考えるのか,環境政策で考えるのか,その他の政策体系でくくるのか,いま問われているのである。筆者は林業を基軸に森林管理を構築して行くのが適当ではないかと考えているが,確信を持ってそれを表明できるわけではない。議論の多い研究会にしたいと願っています。
  • 内山 寛, 杉浦 孝蔵
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    わが国におけるシイタケは特用林産物のなかでも,生産量,生産額ともに多く,山村地域振興において重要な役割を果たしている。しかし,近年中小規模原木シイタケ生産者の経営環境は厳しく,優良原木の不足,生産コストの上昇など,厳しさを増している。このような状況の中で,首都圏のシイタケ産地として市場から期待されている福島県におけるシイタケ生産者の動向について調査を行い,既報の神奈川県の生産状況を踏まえて検討したのでその結果を報告する。福島県におけるシイタケ生産者の50.8%が,現在の経営状況を「普通」以上と認識する一方,シイタケ生産の継続については,シイタケの生産を「やめる」が神奈川県のシイタケ生産者より少なく,山村の地域経済におけるシイタケ生産の重要性が示された。また,今後のシイタケ産業の伸びについては,「伸びない」と認識する生産者が68.0%で神奈川県のシイタケ生産者と同様に厳しい認識を持っていた。今後,福島県においても他地域の生産者の状況を踏まえてシイタケ生産に関する問題の解決を図り,各産地間の協力体制を確立し,シイタケ産業の発展を図って行くことが重要であると考える。
  • 石井 寛
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1992年の地球サミットで採択された森林原則宣言と「アジェンダ21」はその後の世界の林政のあり方に対して,大きな影響をあたえた。持続可能な森林管理のための基準と指標づくりが世界的に取り組まれる一方で,各国で林政と林業プログラムの見直し,そして森林法の改正がおこなわれている。フィンランドは1996年に,ニュージーランドは1993年に森林法を改正している。フインランドの林政は中央政府の役割を重視しているのに対し,ニュージーランドの林政は中央政府の役割を限定するとともに,人工林林業では私的セクターを重視している。地球サミット以降において1国の林政に関わる政策形成は国際的背景と影響のもとでおこなわれていることが特徴として指摘できる。
  • 大浦 由美
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,戦前期における森林のレクリエーション利用と国有林との関係を明らかにするための一環として,明治初期を対象として,明治6年(1873)に早くも制度化される「官有地公園」と官林の関係を整理し,国有林の成立過程において,官林内への公園設置要求に対して官林側がどのように対応してきたのかを明らかにすることを目的としている。公園制度は,官林成立当初の無制限払下政策によって荒廃が危惧された社寺上地林の保護策としての側面を強く持っているが,実質的に社寺詣を中心とする伝統的観光地としての整備が行なわれた事例も見られた。また,官林の農商務省山林局への移管後は,公園設定に対して,土地所有者である官林側に大きな権限が持たされることとなった。このことから,この時期の公園設置への官林側の対応は,国有林のレクリエーション的利用への対応の嚆矢といえる。実際には,国有林及び政府の事情の許す範囲で土地の便宜を図るのみの対応であり,消極的な段階といえるだろう。
  • 片平 修一
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1991年ソ連邦崩壊以降,その「社会主義計画経済」に対する検討が様々な角度から行われている。本稿では,旧ソ連・ロシアにおいて外貨獲得のためのわが国への主要輸出品目として位置づけられてきた木材が,いかなる資源政策のもとで生産されてきたかを既存の文献・資料により俯瞰するものである。ロシア革命以後,旧ソ連・ロシアでは森林資源の計画的利用および国土管理のための森林保全を達成することが目標とされ,少森林地区における過剰な森林伐採による木材資源の枯渇に対応して多森林地区における森林開発が必然的なものとされた。中央集権的「計画経済」のもとでの巨額の国家投資による鉄道の敷設・伐出過程の機械化等は少森林地区から多森林地区への伐採地の移動を可能ならしめた。しかし,その結果は本質的な意味での資源問題を解決すべくものではなく,少森林地区における工業的森林資源利用と国土管理上の森林保全との矛盾を外延的に乗り越えようとしたにすぎない。木材調達および木材工業部門の肥大化のもと,当初の『土地に関する布告』および『森林に関する布告』において掲げられた理念は全く形骸化され,国土保全や地域住民の森林資源利用は考慮されないまま資源略奪的森林伐採が推進されたものであった。
  • 加藤 滋雄
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    木材産業の情報化は他産業に比べて遅れをとっているが,近年,プレカット工場と取引先の間でCAD設計データを送信するネットワークシステムを構築し,木材需要の拡大や取引先との情報連携強化に役立てようとする取り組みが始まっている。しかし,その動きは始まったばかりであり,プレゼンテーション用CADの操作性改善やCADの教育支援体制づくり等様々な問題があり,ネットワークシステムも定常的に活用される状況には至っていない。また,近年急増したプレカット工場は同業者の過当競争や稼働時期の平準化などの経営上の課題を抱えており,プレカット加工だけでなく加工部材の拡大や木材以外の住宅部材の取扱い拡大など総合的な住宅部材供給機能の充実を目指す意向が強くなっている。このため,プレカット工場の課題解決に結びつくプレカット工場をオルガナイザーとした情報化が必要となっており,木材業界が一体となった情報化推進体制づくりや要員育成などの課題に取り組むことで,木材業界の情報化を先導し,木材流通の合理化を大きく促進させることが期待できる。
  • 栗栖 祐子, 依光 良三
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    構造的危機が深まってきた今日の林業にとって,自治体,森組,農林家,素材業等の連携の下での組織化と担い手再編という内発力に支えられた林業地づくりが,危機打開にとって1つの重要な要素である思われる。本論文では,戦後の典型的な新興林業地である高知県梼原町を事例として取り上げ,熱心な林業地形成への取り組みと組織化のプロセスや担い手の動向並びに課題について分析を行った。梼原町は戦後の拡大造林期を経て,80年代に町主導のもとでの基盤整備と農林家による保育間伐が他地域に比べて高レベルで展開し,さらに80年代半ば以降は,森組と自営生産林家の連携により収入間伐が増加し始める。そして90年代に入ると,「協議会」の結成,森組作業班の近代化,情報システム化の構築,大型製材工場の完成の他,自主的な林産企業組合の設立や素材業者の組織化等が行われ,これらが町と森組を中核に有機的に結合され,自営生産林家を含めた林業のシステム化段階に到達している。しかしこのような地域ぐるみによる林業発展がみられるものの,自営生産林家の高齢化・後継者難(家族経営の衰退)等の問題が一層深刻化し,底辺の厚い林業地形成に向けて大きな課題となっている。
  • 栗山 浩一
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    北海道の釧路湿原は国立公園に指定されてから観光客が急増したため,バブル期にはリゾート開発が行われるなど,過剰利用による湿原生態系への影響が懸念されている。そこで,釧路湿原のレクリェーション価値を仮想評価法(CVM)を用いて評価し,釧路湿原の観光開発のあり方を検討した。CVMはアンケートを用いて環境価値を評価する手法である。分析結果は,以下の通り。(1)釧路湿原は多目的旅行者が大半であるため,トラベルコスト法による評価は困難であった。(2)支払意志額には生態系に対する知識と観光地のイメージが影響していた。(3)支払意志額は訪問者一人当たり中央値で2,398円,平均値で4,405円であった。これを集計すると,中央値ベースでは15億円,平均値ベースでは28億円となった。
  • 坂野上 なお
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    Most Japanese builders use laminated lumber for structural members. Major companies in the Japanese housing industry consider glulam (laminated lumber) completely seasoned wood. Glulam has therefore been replacing green lumber for columns, but some kiln dried lumber is still used as before. The use of glulam is almost equal to that of kiln dried lumber. Glulam beams are not as widely used as columns, since it is not necessary for beams to be completely seasoned. However, glulam beams used for parts to be especially heavily loaded are more valuable than dimension lumber. One reason is that recently the quality of dimension lumber, to be used for beams wider than 300mm or so, has declined. Another is that, for similar requirements in construction, the dimensions of glulam beams are smaller than those of ordinary wood, reducing the variety of lumber sizes. Glulam and some kinds of ordinary wood are almost equivalent, and the choice of material therefore depends on housing builders' preference, based on their own strategies. These circumstances, however, may change with the present development of improved wooden constructions that require more strictly seasoned wood. If this method of construction becomes popular in Japan, then subtle differences in the water content of structural members, both columns and beams, will be of greater importance, and the use of glulam will increase and exceed that of ordinary wood.
  • 島本 美保子
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    In this paper I analyzed what kind of impact would occur to the production, consumption, export, and import of forest products in each regions in the world by comparative dynamics using modified IIASA Global Trade Model of forest products. I also clarified to what extent the system of environmental pricing will have effect to diminish the degradation of the growing stock of especially tropical forests. The results are mainly as follows. The production of nonconifer sawlog of tropical forests will decrease within 10%. In temperate and boreal zone the effect will be very small. As for the growing stock of tropical regions, in the Base Case the annual decreasing rate of growing stock were 0.16% in Latin America, 0.08% in Africa, 0.48% in Southeast Asia. Considering the damage of surrounding stumpages at the time of harvesting and road construction, each rate were 1.32%. 0.67%, 2.29%. When we carried out the environmental pricing under the very moderate assumption of deforestation, we would be able to sustain the forest stock quantity in Africa and Latin America. But under the assumption of forest degradation counting damage of surrounding stumpages at the time of harvesting and road construction, the annual decreasing rate became 0.97%, 0.48%, 1.98% in each area, Therefore the deforestation would not be stopped by only environmental pricing in all tropical regions.
  • 銭 剛
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    周知のように,中国の西北地区では,長い開発史の中で,森林資源が極端に破壊され,広範囲に及ぶ裸地を生じ,特に甘粛省の河西回廊地域では,砂漠化が進み,深刻な生態系荒廃の危機に直面している。この傾向を反転させるために,防護林造成の必要性がすでに明らかとなっている。本論文では,中国西北乾燥地域である甘粛省の河西回廊を研究対象とし,同地域における80年代以後の農村経済改革及び請負生産制の導入などの背景を把握したうえで,この地域での防護林造成の現状を報告し,その成果と問題点を検討するものである。
  • 田中 亘
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    近年,地域材の需要拡大策の一つとして産地の製材品等を消費者に直接提供する産直住宅活動が注目されるようになり,平成8年度「林業白書」にもその取り組みが紹介されている。本報告は全国各地で展開されるようになった産直住宅活動の発祥地である岐阜県および同県加子母村を事例として取り上げ,その活動が地域の林業および建築業にどのような影響をあたえているか,地域材振興に関してどれだけの意義を持つものかを考察するものである。1980年に岐阜県東濃地域で始まった産直住宅活動は,良質な東濃ヒノキ材を使用した高級住宅・昔から「飛騨の匠」と呼ばれる大工技能者の蓄積・需要地の名古屋に近い地の利,という特徴を活かしてこれまで実績を重ねてきた。その取り組みは地域材の需要を拡大すると同時に,産業連関的に地域関連産業の振興にも大きく貢献している。しかし一方では,今後とも産直住宅活動を継続・発展させていく上で,大工技能者の高齢化・高級住宅需要の伸び悩みといった問題も指摘されるようになっている。
  • 田村 早苗, 永田 信, 立花 敏, 大橋 邦夫
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1955〜95年の「国勢調査」産業別就業者数のデータを用いてコウホート分析を行なった。全産業と建設業はほぼ同様なコウホート分布を示し,農林漁業と全産業とは全く異なる分布形態を示した。55年以降の農林漁業における労働の中心的世代は1930〜40年生まれコウホートで,全産業に比べて高齢化が顕著である。また,世代交替が行われていないことも全産業との大きな相違であった。年令階層別に見ると,15〜19歳の純参入は急激に減少した。また,75〜80年と90〜95年にかけての2つの期間で50歳以下の幅広い年代で参入の超過が見られた。しかし,そのコウホート比は非常に小さく,この年齢層の参入超過が構造化するには至っていない。林業就業者の減少は55〜65年に集中していた。前半は25〜29歳を中心に退出が大きく,後半は広範な年齢層に広がった。高度成長期,まず若い人達が他産業から求められ,その後さらに多くの労働力が求められた様子が観察できた。将来的に広範な年齢層で減少が続けば林業就業者は1万2千人と推計される。しかし,中年層以下の参入超過が構造化すれば3万人と推計された。
  • 野嵜 直
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    本稿は,紙・パルプ資本による古紙消費構造と,それを支える古紙流通構造を分析したものである。現在,古紙は製紙原料の約半分を占め,原木と並び紙・パルプ資本にとっては重要な原料となっている。新聞,雑誌,段ボール古紙の「裾物三品」は,主として再び新聞,段ボールとして用いられる。また,家庭紙や印刷用紙向けには上物の中でも「模造・色上」が用いられる。リサイクル意識の高まり等から裾物三品の回収が増加したが,消費増には技術的な困難があり,裾物三品の余剰問題が顕在化した。一方,古紙余剰下で古紙価格は過去最低となっており,古紙回収業者は長時間労働による古紙扱い量増で何とか経営を維持している。直納問屋も紙・パルプ資本の古紙買入価格が下がり,ほとんど利潤が出ない状態になっている。紙・パルプ資本はさらに安価な古紙を求めて古紙輸入や,古紙回収・分別コストの行政負担を求めている。現状では古紙リサイクル構造の矛盾が末端の回収業者等に集中してあらわれており,古紙回収・分別の社会的コストが回収業者の長時間労働によって支えられている。
  • 幡 建樹, 藤掛 一郎
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    Using data from interviews with 38 sawmills in Tokushima Prefecture, three different indicators of labor productivity are constructed to analyze the differences in management strategy between groups of sawmills. Sawmills are divided into four groups according to the types of logs and products. Three of them are sawmills consuming Japanese cedar logs, and the other consists of mills that consume imported logs such as Douglas fir and hemlock. Three indicators employed in the analysis are as follows; the first is log consumption volume per mill worker per year, the second value added per mill worker per year, and the third value added per year divided by the total number of mill and other types of workers plus employers. The value added is defined as lumber sales minus log procurement costs. In terms of the first indicator, thus in terms of volume productivity, there are much differences between four sawmill groups with imported log mills having the highest productivity, whereas in terms of value added productivity measured with the second and third indicators, there appear no marked differences between groups. As regards intra-group differences of labor productivity, it is observed that although labor productivity is highly correlated with the scale of sawmill for the group consuming imported logs, it doesn't hold true for the other groups which consume domestic logs, especially when value added productivity indicators are used. These observations seem to imply, among others, the different principles in production behavior with respect to the choices of product mix and of technology between imported log sawmills and domestic log sawmills.
  • 安 洋巳
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    熱帯地域の村落住民による植林は資源再生の有効な手段であるが,それがいかなるメカニズムによって地域に定着するのかを明らかにした研究は少ない。本稿はタンザニア中央部,半乾燥地域の一村落を事例に取り上げ,集村化以降の環境変化と住民の植林行動の関連性を明らかにした。住民の植林は「深刻」と言われる燃材不足への直接的な対応ではなく,集村化以降の人口・耕地の急激な集中によって保有地の境界線を確定する必要性から生じた。さらに換金作物栽培の普及によって新しい家屋建築が可能になり,建築用材に対する需要が高まったことで広がったのである。現状では天然林からの燃材供給不足に対して植栽木からの供給は部分的なものであるが,今後,燃材獲得を志向した植林が新たに広がっていくものと考えられる。この一連の過程は,住民の植林行動が社会経済環境の変化に端を発し資源問題への対応として定着しつつあることを示しており,乾燥,半乾燥地域における植林普及の条件を考える際に,村落社会の変化を多角的に捉える視点が必要なことを示唆している。
  • 柳幸 広登, 餅田 治之
    原稿種別: 論文
    1998 年 44 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    ニュージーランドの人工造林の展開は,(1)「第1次造林ブーム期」(1925-35年),(2)低調期(1930年代後半〜50年代前半),(3)「第2次造林ブーム期」(1960年代後半〜80年代前半),(4)急落期(1985〜1991年),(5)「第3次造林ブーム期」(1992年以降)の5つに時期区分できる。このうち「第3次造林ブーム期」の大きな特徴は,造林会社による「パートナーシップ造林」が主要な造林方法となっていることである。パートナーシップ造林が急増した背景には,(1)羊放牧業の不振,(2)1991年の税制改正によって造林投資の7割前後が所得税の控除対象になったこと,(3)好調な素材・製品輸出に支えられて立木価格が上昇したこと,(4)1990年代前半の社会保障制度の改革により退職後の備えを自力で準備する必要ができたこと,(5)パートナーシップ造林への投資が比較的少額で行えるため,従来林業に無関係であったさまざまな人々を引きつけていること,などが指摘できる。
  • 藤澤 秀夫
    1998 年 44 巻 1 号 p. 123-130
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    持続可能な森林経営の確立は国際的な課題でありながら我が国の現状は必ずしも進展しているという姿が見えてこない。それは国内林業が余りにも深刻な状態にあることが原因しているように考えられる。そこで,ヘルシンキプロセス関係国の中で既に関係法令の改正も終わって運営されつつあるフィンランドを主体に制度運営の現状を調査した。調査に当たっての問題意識は,持続可能な森林経営と林業の関係についてである。特にその関係が制度にどのように反映されているかを重要視した。その調査の結果を総括して云うならば,「新たな林業」と表現されるものであって,生態系を重視した林業を構築するものである。それは地球的環境という点で今日的課題であるのと同時に林業にとっても必要なことであり,両者相まって持続可能な森林経営構築の原動力となっている。我が国と比較した場合,余りにも条件的差異が大きいが,我が国が,これから持続可能な森林経営を推進するためには,林業の活性化と関わらしめてゆくことが重要なことであり,その点でフィンランドに見られる「持続可能な林業の資金調達に関する法律」は参考になる面が少なくない。
  • 石井 寛
    原稿種別: コメント
    1998 年 44 巻 1 号 p. 131-132
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1998 年 44 巻 1 号 p. Cover3-
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1998 年 44 巻 1 号 p. Cover4-
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
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