1999 年 45 巻 1 号 p. 99-104
我が国林政における市町村の位置付けが高まるなか,近年では地域森林資源の計画主体としての役割が強く求められている。こうしたなか1993年,自治省から公有林化政策が呈示された。森林を自ら取得して管理する公有林化政策の登場は,従来の市町村林政の枠内では捉えきれない性格を持つ。そこで,(1)公有林化政策の進展状況の把握,(2)公有林化に対応する市町村の目的,(3)計画策定から地域森林管理に繋げていこうとする方向性の中で森林を公有化することの意味,の3点について分析を行った。その結果,(1)公有林化された森林の面積はきわめて小さいが,対応する市町村は多い,(2)森林レクの場の確保・漁場保全・生態系保全・地域文化の保護継承を目的とした森林保全など,多様な目的を持って公有林化が実施されている,(3)地域振興策・土地利用計画などと結びついた森林利用・保全といった課題に対応するために公有林化を行っている事例が多く,市町村による民有林の公的管理という側面は希薄であることが明らかとなった。