抄録
本稿では,グローバル資本主義段階において森林・林業がどのように変容したのかを,資本と土地所有という側面から鳥瞰した。かつて林業地代論が想定した,国内の育成的林業と海外の採取的林業という競合の構図は大きく変化している。すなわち,海外においては,経済の金融化と新自由主義政策の影響の下に育成的林業が形式的に成立したのに対し,国内では,資本の要求の下に再造林費を確保しえない形での生産拡大が起こり,採取的林業範疇というべき状況にある。この逆転現象は,国内において林野所有がグローバル資本主義に適合的な形で再編成されつつあることを背景としている。また,政策面では拡大造林期との類似点もみられる。こうした変容に対して,「森林セクター」はどのような対応をとりうるかを考察した。