抄録
2010年代以降の木材需要動向を捉えるために,2000年代初頭までの木材需要産業をめぐる研究の流れをふまえ,2000年代に入ってから報告された建築用材の需要動向をめぐる研究を取り上げて木材需要の現状および課題を検討した。その結果,建築用製材の需要に関しては製材の性能・品質重視の考え方が進んでいるうえに,KD柱材のなかに多様なグレードが存在するなど,市場は細分化していると考えられた。建築材需要発生の現場を対象にした研究を参照したものの,細分化された市場の詳細について明らかにするには,なお検討が必要であることがわかった。またエンジニアードウッドに関しては,集成材ラミナや針葉樹合板の原料として,にわかに国産材資源が注目され,とくにスギが針葉樹厚物合板の原料として優位性があることが指摘されており,将来的にも安定的な需要と継続が期待できるのではないかと考えられた。