林業経済研究
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ジャワ島における森林化と政府植林事業非実施地域の民有地における住民による植林
水野 広祐
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2016 年 62 巻 3 号 p. 31-41

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抄録
本稿は,今日のジャワ島で見られる森林化が,主として住民の所有する土地で生じていることを明らかにした。本稿は,2012年に実施した社会経済調査に基づいて住民による所有地や借地における植林を論じた。調査は,これまでの政府による植林事業の重点的対象地域ではない,歴史的に甘蔗・稲作地帯であったジャワ島北海岸平野部において実施した。本調査から,平野部においても樹木の植栽があり,市場向けの用材樹木が,農地においても屋敷地においても植栽されているが,植栽本数が多くなると屋敷地ではなく農地に植裁される割合が増えることを明らかにした。さらに上層農民のみならず農地を所有しない世帯も,所有する屋敷地や借地に植裁していること,および第一の職業が非農業部門職種である者も多く植栽していることを明らかにした。そしてこれらの用材樹木は,特にセンゴン(Sengon, Praserianthes falcataria)において世帯当たりの植栽本数が多く,また樹齢が高くない点で,屋敷地に植えられている多目的樹種と異なることを明らかにした。ただし,多目的樹種も多くの本数が植栽される場合があり,屋敷地以外の農地に植栽される例も増えている。用材樹種や多目的樹樹種の植裁は,農業と非農業をまたぐ住民の生存・投資戦略の中で有力な選択肢になっていることを明らかにした。
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© 2016 林業経済学会
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