抄録
2010年代に入り,国産材需要は構造材を中心に無垢製材品から集成材への転換がみられた。そうした変化に対して,林業地域がいかに対応したかに関する事例研究は少ない。そこで本研究は,愛知県東三河地域の木材流通加工事業体「HOLZ三河」に所属する原木市場と製材工場を中心的な事例として,その市場対応を明らかにするために市売伝票を分析し,併せて検証のために,地域内外の製材工場と原木市場に対する聞取り調査を行った。その結果,愛知県森連が運営する原木市場「HOLZ三河流通事業部」は,従来行っていた地場製材工場へ向けた小口需要の販路を保つ市売取引と,県外買方の需要を集約し,その要求に適った選木を行う相対取引に加え,組合員の賃挽き等を主とする経営から集成材用ラミナ生産を主とする経営に転換した「HOLZ三河製材事業部」への相対取引を開始した。それにより,地場と県外買方の需要から外れた多様な原木の新たな需要先が形成されたことがわかった。このように,素材需要の転換に対応し素材流通機能と加工機能を柔軟に再編できたことが,東三河地域が素材価格の崩落を抑止し得た要因であると考えられる。