抄録
ベトナムの資源政策は,東南アジア諸国の中では最も包括的に取り組まれていると言える。本稿では,その実施過程を
明らかにするとともに,それら資源政策を実現に導いた森林資源戦略の背景を考察した。そのために,ベトナムの資源
政策を,森林の動態と保護,木材加工産業における原料消費,木材の合法性と持続性という3つの視点から分析した。
その結果,人工林資源を拡大した上で天然林伐採禁止や丸太輸出禁止を行ったという政策実施の妥当性や,国際市場に復帰するタイミングの良さ,そして人工林材に適した製品を国際市場に供給したことといった特徴を明らかにした。こ
れらを可能としたのは,社会主義と市場経済が混合したベトナムの政治経済体制が,公共性と経済性を併せ持つ森林・
林業に関連する課題解決に適していたからであると考えられた。