2020 年 66 巻 1 号 p. 8-22
世界的に木材原料の天然林資源から人工林資源への移行が進行している。そのプロセスを理解するため,天然林コンセッションの資源が減少し,人工林コンセッション,土地転換材,住民林業からの木材生産が増大するインドネシアにおいて,国内の木材と木材製品の主要な生産地,また両者の関係がどのように変化したのかを分析した。インドネシアでは,1990年代までは主にカリマンタン,スマトラの天然林コンセッションで木材生産が行われ,域内で合板や製材品が生産されていた。2000年代以降,スマトラにおけるパルプ・チップ生産がインドネシアで最も木材を消費する木材製品製造業となり,原料は主にスマトラの人工林コンセッションからの木材が使われているが,他の地域の人工林コンセッションからの木材や,スマトラにおける住民林業によって生産された木材も使用されていると推定された。合板・製材品の生産の中心はジャワに移動し,ジャワの住民林業がその最大の資源供給源となるとともに,カリマンタンの天然林コンセッションの木材も使われている。カリマンタンでは天然林コンセッションの木材を主な原料とする合板生産が維持されているが,一部人工林コンセッションからの木材も使用されていると推定された。