抄録
本研究では1960~2019年を分析期間として,スギ製材用丸太の供給モデルを計量経済学的手法により推定した。時系列データの定常性を考慮するため,供給モデルの推定には単位根検定および共和分検定の結果を基に構築したベクトル誤差修正モデルを用いた。その結果,長期的な動向を示すパラメータはいずれも符号条件を満たし,非弾力的であった。また,これらの推定値から丸太供給量の増加には人工林蓄積量の増加が重要であることが示された。他方,短期的な動向を示すパラメータの推定結果から,丸太供給に関わる変数間に短期的な調整過程があることが明らかになった。1974年以降においてスギ丸太価格は有意に低下トレンドにあったが,日本が変動為替相場制に移行して円高基調となったこと,戦後に造成された人工林が利用段階に入り,丸太供給量が増加したことなどが要因であると考えられる。