抄録
林業への補助金はこれまで非効率性が指摘されている一方,2024年度より新たに森林環境税が徴収されることとなり,林業への補助金は今後増額する可能性がある。本研究は林業への補助金が自国にもたらす利益および外国にもたらす不利益を分析することで,日本の林業政策のあり方を問うものである。分析の結果は以下のとおりである。 (1) 補助金の減額によって仮に国内産原木の生産費用が10億円増加した場合,国内の生産者余剰は4.0億円,消費者余剰は3.2億円減少し,差し引き2.8億円の死荷重が抑制される。加えて,外国の社会的厚生は3.2億円改善される。林業への補助金には死荷重があり,外国に犠牲を強いている。 (2) 国内産原木,製材工程,国内挽き製材品のうち,最も死荷重の少ない補助対象は原木生産である。他方で,外国に与える損失が最も大きい補助対象も原木生産である。本研究では,林業政策がもたらす厚生の変化を定量的に明らかにした。他方で森林の正の外部性を測定する研究は多くあるため,本研究の分析結果と組み合わせることで,林業政策の総合的な評価が可能になる。