抄録
本報はスウェーデン国家森林プログラムを対象とし,既往研究,公開資料,主要なアクターを対象とした聞き取り調査の結果に基づき,森林行政と環境行政の関係,政策アジェンダとして設定された経緯,政策決定のための枠組み設定における主要なアクターの役割を分析した。スウェーデン国家森林プログラムが政策決定されるまでに5年を要したが,その原因は,アクター間の利害関係を調整し,最終案を立案する役割を担った評議会において,FSC認証林における基準に反した皆伐施業の実施を公表したことで政治的交渉力を持った環境NGOおよびスウェーデン環境保護庁と,スウェーデン林業を支える産官学連携を構成する木材関連企業およびスウェーデン林野庁との対立であった。スウェーデン国家森林プログラムの政策立案に際し,事前に同国内で実施されていた森林科学の研究プロジェクトFuture Forestsが,森林の供給する持続可能な生態系サービスに関する科学的知見および政策形成の為の参加型アプローチを前提としたフレームワークを提案した。日本国内においても,森林に関わる官庁だけでなく,森林経営に関心を持つ企業が増えていることから,同様の研究プロジェクトの実施が,将来の森林政策の立案に資することを指摘した。