抄録
近年,持続的な自然資本管理に関してはネイチャーポジティブなどの議論が世界的に急速に展開している。しかし,国内の森林政策は,こうした自然資本に関する世界的動向に対応できず,林業経済学会もこの議論ではリーダーシップを発揮できていない状況にある。なぜ,日本の森林政策および林業経済研究が持続可能な自然資本管理をめぐる世界的潮流に立ち後れてしまったのか。本論文は, 自然資本管理の世界的潮流と日本の自然資本管理の動向を展望するとともに,林業経済学会における自然資本管理の研究動向を踏まえることで, 日本の自然資本管理の抱えている問題点を分析した。その結果,自然資本においては企業の役割が重視されているが,日本の森林行政と林業経済研究者はいずれも森林を自然資本として認識せず,自然資本管理をめぐる世界的潮流から立ち後れたことが示された。分析結果をもとに国内の自然資本管理に対する今後の課題について検討した。