抄録
本稿では,『林業経済研究』および『林業経済』に掲載されたアジアを対象とした2001年以降の林業経済研究(アジア地域林業経済研究)の論考を対象とし,研究動向の整理と今後の展望を検討した。分析にあたり,対象論文を「分権化」,「コンセッション」,「森林認証」という森林ガバナンスを特徴づける論点に沿って整理したうえで,「国際環境ガバナンス」もしくは「ポスト天然林時代」に対する成果と今後の望まれる研究課題を検討した。その結果,分権化の展開と人工林資源の造成とその利用に至る軌跡を実証的に示したことがアジア地域林業経済研究の到達点として評価できた。一方,生物多様性保全や気候変動対策といった国際環境ガバナンスへの言及した論考は限られていることから,今後は地球規模の課題解決を射程とした研究が求められる。同時に,国際環境ガバナンスという文脈において森林が単純化された概念で包摂されつつあるなかで,森林・林業の多層的な意義を提示する地域理解に基づいた研究の重要性も高まっていくと考えられる。