林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
林業経済学における自然保護をめぐる研究の歩み
多様な価値と制度構築
柴崎 茂光 平野 悠一郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2026 年 72 巻 1 号 p. 14-27

詳細
抄録
過去20数年間の自然保護をめぐる国際的な潮流として,原生自然の保存から生物多様性の維持や人間社会との共生へと焦点が移り,PESやOECMなどの新たな概念や制度も生まれてきた。また,聖地の尊重や保護ガイドラインの策定など,人間的・文化的側面から自然保護を捉え直す動きが強まっている。日本においても自然共生サイトの制度化や利用者負担制度の導入が進んだ。林業経済学の分野では,1990年代後半から,自然資源の価値を貨幣的に評価する研究が大きく発展したが,2010年代に入ると,森林教育や文化的価値に関する定性的な研究も行われるようになる。保護と利用の対立だけでなく,自然・森林をめぐる多様な価値や立場・権力が絡み合うことが明らかとなり,ガバナンスや参加型の合意形成の重要性が指摘されてきた。しかし,日本においては,自然保護をめぐって財政・人員不足,未成熟なリスクマネジメントの問題が恒常的に存在する。また,形式的には住民参加が組み込まれていたとしても,実質的には上意下達のガバメント構造が維持され,対処療法的で消極的な選択がなされ,地域とコンフリクトが生じている状況が,実証研究から明らかとなった。
著者関連情報
© 2026 林業経済学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top