抄録
本小論では,明治中期から大正期にかけての郡制期を中心に,郡に関連する森林政策について,その歴史的展開と現代への影響を論じた。現在では地理的呼称に過ぎない郡だが,日本の近代化過程において,地方行政組織として重要な役割を担った。埼玉県などの事例を通し,郡制期には,郡役所が様々な森林事務を担い,林業奨励や森林技術者の育成に貢献した実態が明らかとなった。また,郡制廃止後も,郡有林の多様な承継,郡立学校や林業試験場の系譜,地方事務所の役割を通じて,郡林政がアジア太平洋戦争後の森林管理に影響を与え続けていることを指摘した。今後の課題として,郡林政起源の森林管理実態の解明,旧郡域における森林管理の可能性の検討,そして地域社会との関係の解明が重要であることを示唆した。