抄録
近年,自然の多様な価値は,道具的価値,内在的価値,関係的価値の三類型として国際的に整理されている。本研究の
目的は,これら3つの価値が,日本の国立公園における訪問行動にどのように反映されるのかを明らかにすることであ
る。具体的には,全国の一般市民を対象としたWebアンケート調査の結果を使用し,国立公園選択と訪問回数を同時に
扱うことが可能な多重離散連続極値モデルに潜在クラスモデルを併用して分析を行った。分析の結果,関係的価値(自
己)および関係的価値(利他)が,性別や年齢とともにクラス所属に有意な影響を及ぼし,訪問行動の異質性が示され
た。一方で,内在的価値に関しては,訪問行動への直接的な影響は確認されなかった。また,道具的価値の観点からは,
世界遺産指定が利用者に経済的便益をもたらしていることが示され,世界遺産指定の維持を裏付ける経済的根拠が得ら
れた。本研究は,自然の多様な価値を反映させた国立公園管理の必要性を示すとともに,関係的価値を育む体験の提供
が,国立公園の利用と保全の両立,さらには世界遺産指定の維持において重要な鍵となる可能性を示唆している。