日本女性骨盤底医学会誌
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腟粘膜の剥離・切除を行わない腟閉鎖術;Simple colpocleisis
木村 俊夫宮田 明美錢 鴻武
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2021 年 17 巻 1 号 p. 104-109

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抄録

性交渉が不要な骨盤臓器脱患者に対し腟閉鎖術はメッシュを用いなくても再発が少なく、合併症によるリスクが高い症例でも局所麻酔で行うことができる優れた術式である。腟閉鎖術には完全腟閉鎖と部分腟閉鎖(Le Fort手術)があるが、いずれも腟粘膜の剥離・切除が必要である。今回、81 才の POP-Q stage4 子宮脱(完全骨盤臓器脱)症例で、抗凝固薬の中止が困難な骨盤臓器脱症例に対し腟粘膜の剥離・切除を行わない腟閉鎖術を行い、Simple Colpocleisis と名付けたので報告する。前後の腟壁に局所麻酔下に横切開を加え、前壁切開創の近位側(子宮側)と後壁切開創の近位側(子宮側)を縫合。次に前壁切開創の遠位側(会陰測)と後壁切開創の遠位側(会陰測)を縫合した。これを繰り返すことにより、腟粘膜の剥離・切除は行わずに腟管の閉鎖を行った。局所麻酔のみのため手術直後から歩行可能で手術翌日に退院となった。 腟閉鎖術は、性交渉が不要な骨盤臓器脱患者にとって有効な術式であるが、完全腟閉鎖術でも部分腟閉鎖術でも腟粘膜の剥離・切除の必要がある。腟粘膜の剥離・切除を行わず、前後腟壁の切開と縫合のみの腟閉鎖は、出血や術後血腫のリスクも少なく従来の腟閉鎖術より簡便である。長期成績は不明であるが、合併症を有する骨盤臓器脱症例では有効な術式と考える。

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