日本女性骨盤底医学会誌
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術前にEvisceration が生じた骨盤臓器脱の1 症例
本田 謙一和田 卓磨栗原 康梶谷 耕二西居 由布子
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キーワード: evisceration
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2021 年 17 巻 1 号 p. 100-103

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抄録

体壁が開いて内蔵が脱出するevisceration は子宮摘出術後に腟断端が離開して生じる場合が報告されることが多いが、今回骨盤臓器脱の術前に後腟壁の裂傷ができて小腸が脱出したevisceration を生じた症例を経験したので報告する。67 歳2 回経産で、腎盂炎に伴う高熱で入院中に腟脱出がみられて院内紹介受診されPOP-Q stage 4の完全子宮脱が認められていた。4 年前頃から腟脱出があり一時はリングペッサリーの留置をうけて通院されていたが出血を伴うことがあり中止し、その後は通院されていなかった。腟閉鎖手術以外の選択枝について他院受診もしていただいていたが、子宮を含む腟壁の脱出部分に痛みを伴うようになり、当院での手術を希望され術前検査を開始した。数日後に腟から腸がでてきたと連絡があり救急受診、腟から小腸が脱出したevisceration が認められたが、外科当直医師により脱出した小腸を損傷なく還納することができた。入院安静で待機して翌日に全身麻酔下に後腟壁の裂傷部分を確認し腹膜 と腟壁は分離して吸収糸でそれぞれを縫合修復した。その10 日後に腟式子宮全摘とLeFort 法に準じた前後腟壁縫合による腟閉鎖手術をおこない、後腟壁の裂傷修復部位は前後腟壁縫合部分より手前に位置するようにした。術後経過は良好で腎盂炎の症状もなくなっていたが、手術から3 か月経過した時点で前後腟壁縫合創が離開し、その後は離開部分の上皮の再生過程にある。evisceration が手術操作が加わっていない状態でも生じたこと、発症前に腟壁脱出部位あたりに痛みが強まっていたことは兆候として重要と考えられた。

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