日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: N22
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防災
模型木を用いた人工気象室における遮断蒸発量測定実験
*鳥羽 妙太田 岳史阿部 修
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キーワード: 遮断蒸発量, PAI, 模型木
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抄録

1.背景と目的これまでの研究では,林内降水量を決定する要因として,降水継続時間や降水強度などの降水条件が一雨遮断蒸発量や一雨平均遮断蒸発強度と正の相関関係にあること(Llorens et al.,1997,服部ら,1982,塚本ら,1988,)や,風速が林内降水量に影響を及ぼしていること(蔵治(1997),石垣(1990))などの報告がされてきた。しかし,いまだに林内降水量を決定する要因がはっきりと確定されていない。そこで本研究では,室内実験からこれらの要因を確定することを目的とした。室内実験のメリットは__丸1__模型木を用いることで蒸散を考慮しなくてよい__丸2__各気象条件を設定できる__丸3__森林(模型森林)の構造を容易に変更できる,などがあげられる。模型木には高さ60cmのクリスマスツリーを用いた。2.実験場所防災科学技術研究所,長岡雪氷防災研究所の新庄支所内にある雪氷防災実験棟で行った。3.実験方法森林構造を表す指標となるPAI(Plant Area Indexes)と,風速,降雨強度に着目した。これらの条件をそれぞれ3段階変化させ,その結果を比較することで遮断蒸発量との関係を検討する。PAIは本数の増減で変化させ6,9,11,降水強度は14.1,22.6,29.5mm hSUP-1/SUP,風速は5,7,10m sSUP-2/SUPという条件を組み合わせ,全部で11種類の実験を行った。実験室内では,日射装置で日射量を,横風発生装置で風速を与え,気温と湿度も一定となるように機械的な制御を行った。日射量は,降雨中は200W mSUP-2/SUP,降雨後は500W m-SUP2/SUP,気温は20℃,湿度は90%とした。降雨中と降雨後で設定を変化させた要素は日射量のみである。実験中の気象要素の制御には限界があり,また,時間や場所による変化を記録する必要がある。そこで,気象要素の観測を合わせて行った。測定項目は,樹冠上で,風速(3高度)・気温・湿度・純放射量・摩擦速度・摩擦温度である。さらに,雨量計を用いて林内降水量の自記記録を行った。気象要素の実験中の平均値を表1に示す。実験は4時間で構成され,最初の1時間が降水時間で,のこり3時間が無降水時間である。与えた林外降水量と測定された林外降水量の差が遮断蒸発量である。4.実験結果遮断蒸発量と,PAI,風速との関係から,PAIが大きくなるほど遮断蒸発量は大きくなり,風速が強いほど遮断蒸発量は大きくなるということがわかった。また,降雨強度が強くなるほど,降水量に対する遮断蒸発量の割合(遮断蒸発率)が小さくなることも分かった。実験に際して,防災科学技術研究所,長岡雪氷防災研究所新庄支所の武田武志氏,望月重人氏をはじめとする研究所の方々に多大な御協力および御助言を頂きました。ここに記して謝意を表します。

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© 2003 日本林学会
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