日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: N18
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防災
粘土団子種子を用いた足尾松木沢での緑化試験
*水谷 完治
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キーワード: 団子種子, 緑化
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抄録

1. はじめに 本研究は栃木県足尾町松木沢のような緑化が困難な場所の緑化方法として粘土団子種子の散布が適当ではないかと考え試験を行った。粘土団子種子は種子が粘土でコーティングされているため、種子は腐敗しにくく、動物に食べられしまうこともない。一方、土壌改良材や化成肥料などを用いると、本来の環境適応機能が損なわれ、それらが流亡した場合に枯死する可能性がある。粘土のコーティングは種子に適度なストレスを与え、より環境適応機能を高めていると推測している。2. 方法 粘土団子種子は砂漠緑化や畑作・稲作に用いられている(福岡,1993)が、小型のコンクリートミキサーを用いて、種子を粘土で丸めて粘土団子種子を作った。試験地は栃木県足尾町湖南国有林内に設定した(図__-__1、図__-__2)。散布種子は木本類としてクロマツ、アカマツ、カラマツ、イタチハギ、ダケカンバ、ヤシャブシ、草本類としてイタドリ、ススキ、ヨモギを用い、木本類と草本類の粒数割合を1:3にした。秋播きを平成13年10月20日、春播きを翌年の4月23日に行った。秋播きと春播きそれぞれ一回の散布密度を100粒/m2と30粒/m2とし、4プロット設け、さらに、2プロットは秋播きと春播きの2度播きの2プロット(散布密度は200粒/m2と60粒/m2)を設定した。1プロットの面積は約47m2である。3. 結果及び考察 春播きから一ヶ月後の5月21日に発芽が見られた(図__-__3)。クロマツ、イタチハギの発芽が良く、順調に発芽本数を増やした。秋播き、春播き、いずれも発芽し、秋播きと春播きの2度播きのプロットの発芽率が最も良かった。2度播きの200粒/m2プロットではha当たりに換算するとクロマツ3150本/ha、イタチハギ7140本/haの発芽があり良好な結果を得た。このようなことから、様々な種子を播く場合、秋と春に飛散する種子があるので、2度播きするのが良いと考えられた。4. おわりに今回の試験ではクロマツとイタチハギなど木本類の発芽が多数確認できた。今後、越冬後の状態や活着する過程を観察する必要がある。また、劣悪な環境下でも比較的発芽が良好である理由の一つとして、粘土によるコーティングが種子の環境適応機能を高めているためと推測しているが、そのメカニズムの解明について樹木生理学の側面からアプローチしたいと考えている。

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© 2003 日本林学会
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