抄録
長野県富士見町の西岳国有林にあるヤツガタケトウの林木遺伝子資源保存林において更新の可能性について検討した。保存林内に100×200mの調査区を設置して林分構造を調べるとともに、実生の定着状況について調査した。林分構造の調査からは過去に一斉更新し、現在は安定している林分であると考えられた。しかし次世代の若木が存在しないことから現在の樹冠木が枯存した後には別種に変化すると予想された。また実生の調査からは、種子生産は比較的十分あるものの、光条件などの環境が悪いことから実生定着がきわめて悪いことが示された。これらのことから、現状ではヤツガタケトウヒを将来的も現地で保存することはきわめて困難であると判断された。したがって、現地保存のためには地掻きなどの施業によって実生の定着環境を改善させることが必要と考えられた。