抄録
効果的な森林浴プログラム及び、効果がより見込める対象者を具体的に示すことを達成する為に、本研究では、要因別の解析を行うことにより、どのような要因が、森林浴の心理効果と関連がありそうかということを2回の調査を通じて検討した。1回目は、東京大学千葉演習林で223名を対象に森林浴の前後の比較、2回目は、43名を対象に京都大学芦生研究林で森林浴をした日と森林浴をしなかった休日の心理状態の変化を比較した。測定項目は、多面的感情状態尺度、体調・気分(10cm VAS)であった。2回の調査で共通して検討した要因項目は、年齢、性別、職業、森林散策に関する嗜好、森林に行く頻度、その場所の訪問回数、同伴者の種類、日常の主観的ストレス及び健康状態、健康習慣、持病の有無、森林の滞在時間、日にち(天候)、森林浴後の疲労度(VAS)であった。また、1回目の調査にのみ用いたのは、職業性簡易ストレス調査票(精神症状、身体症状)、森林に来るまでの交通手段及び所要時間、森林内での不快なことの有無、森林散策ルート別、2回目の調査にのみ用いたのは、森林内でしたことと歩いた距離、及び、対照日の過ごし方(行ったこと、飲酒状況、運動量、好きなことができたかどうか、楽しかったかどうか)であった。1回目の調査では、森林浴により、否定的な感情の程度が低くなり、肯定的な感情の程度が上昇するということが確認され、否定的な感情に関しては、日常ストレスを感じている人ほど、その効果は大きかった。一方、2回目の調査では、森林浴日に関して、1回目の調査とは若干傾向が異なり、肯定的な感情に関しては、森林浴前後に有意差はなく、森林浴を数時間することにより良い心理効果が得られたというよりも、対照日との比較により、森林に居るだけで、肯定的な感情が高まっていたことが確認された。