日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: I12
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動物
人為的な小規模伐採のゴミムシ群集への影響
*大澤 直哉寺井 厚海平田 啓一中西 麻美牧野 亜友美境 慎二朗柴田 昌三
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抄録

小規模な伐採でも、ゴミムシ類の微環境に種依存的な影響を与えるとの仮説のもと、都市近郊二次林で、旧来の森林利用形態に似せた小規模伐採を行い、伐採の前後で、生息するゴミムシ類の個体数やニッチ幅が、種レベルでどのように変化したか、またその要因はなにかを調査した。京都大学フィールド科学教育研究センター上賀茂試験地斜面に、伐採区、非伐採区各3カ所を設定し、各カ所9カ所づつ(計54カ所)、5m置きにトラップを設置し、トラップ(月1回1日間)に捕獲されたゴミムシ類をサンプリングした。ゴミムシ類の個体数に与える環境の影響を調べるために、伐採区及び非伐採区6カ所の、伐採前後の植生(木本のみ)、L層及びFH層の重さ、土壌含水率を測定した。調査期間は1999年6月から2001年5月の2年間で、2000年1月に伐採区で伐採を実施した。2年間で、303個体13種のゴミムシ類が捕獲され 、捕獲された種の生息場所の特徴から、本調査地は、やや撹乱された森林に特徴的な種が多く分布していることがわかった。日・トラップあたりの個体数の比較から、大型で肉食者や昆虫食者のCarabus dehanii, Ca. yaconinus, Chlaeninus posticalis, Haplochaeninus costigaの4種は、伐採により、個体数の減少やニッチ幅の縮小が見られたが、小型で種子食者のSynuchus arcuaticollisやS. cycloderusの2種は、伐採による個体数の減少やニッチ幅の縮小は見られなかった。植生の種多様性はその場所のゴミムシ類の多様性と有意な相関が見られ、植物の種数が多いほど、生息するゴミムシ類の種数も多くなった。また調査場所のFH層の重さの平均値が増加すると、Pterostichus latemarginatusの総個体数は有意に増加し、S. cycloderusでも増加する傾向が見られたが、土壌含水率やL層の重さは、いずれの種でも有意な関係は見られなかった。これらの結果から、土壌含水率がゴミムシ類の多様性や密度を決定しているのではなく、FH層や植生の多様性という、潜在的な食物や生息場所の豊富さが、ゴミムシ類の多様性や密度を決定する要因として、重要である可能性が示唆された。

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© 2004 日本林学会
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