森林バイオマスを評価する手法の一つとして地上レーザスキャナを用いた手法がある。筆者らはこれまでビッターリッヒ法を発展させた、箕輪の上部直径による林分材積推定法を用いた方法を検討してきた。本報では現実林分での有効性を検証するため、斜面林地にて実験を行った。スキャナを用いて取得した計測情報は、x,y,zの三次元点群データに変換し、フィルタリングを行うことで地面を抽出してレーザスキャナとの比高によるDTMデータを作成した。また、計測情報から樹幹部を抽出し、任意の位置の樹幹直径・測定高を自動計測した。材積の算出にあたっては箕輪法を用いた。箕輪法は平面上での使用を仮定しており、また計測地点の高さより上の材積について想定しているため,本研究では抽出した樹幹のz座標値を個々の点でのDTMの比高で減じることによって、コンピュータ内部に擬似的な平面を設定し、地表からレーザスキャナにて計測する状態を構築して計算を行った。材積推定値は真値に比べて全体的に過小傾向となった。これは、林床が密度の濃いササで覆われているため、ササの上面を地表面として抽出してしまうことから、実際より低く樹高を見積もっているためと考えられる。しかし、ササ高より上部の材積の真値の結果と一致することから本手法の可能性が示唆された。