日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: K02
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T14 森林整備のための方策・展開
持続可能な森林施業に適合した伐出・更新方法の一考察
小面積皆伐と単木間伐
*谷山  徹木村 光男
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抄録

1.はじめに県民の意識が快適で安心できる暮らしや、心の豊かさを重視する方向へ変化しており、森林に対しても公益的機能の発揮が一層高まっている。今後、森林資源の持続的な利用を図っていくため、従来の皆伐からスギ・ヒノキ一斉人工林という施業体系を見直し、自然環境に配慮した主伐(誘導伐)方法、公益性や安全性を重視した持続可能な森林管理システムを構築する必要がある。今回は、小面積皆伐と単木間伐の生産性や経費、および更新方法の違いによる森林環境調査(下木損傷調査、光環境調査、表土流亡等の調査)を行ったので概要を報告する。2.試験方法 上浮穴郡久万町町有林のヒノキ(一部スギ)人工林64年生、面積2.4ha、標高980m、平均傾斜22度において、小面積皆伐区(15m×15m、20m×20m、25m×25mの伐採面積をそれぞれ2か所)と単木間伐区、無間伐区を設けた。平成15年9月に伐採し、伐採方法の違いによる伐出の生産性、経費等について調査した。伐出作業システムは、地形傾斜が比較的緩やかであったため、林内作業車道(幅員約2.5m)を開設し、車両系による作業システムとした。 また、下木に存在する天然ヒノキや広葉樹を活用した更新方法について検討するため、各プロット別に上木伐採による下木損傷調査、全天空写真を利用した光環境調査、表土流亡では、土砂受け箱(高さ15cm、幅25cm)を8基設置し、水中篩別で細土(2mm未満)石礫(2mm以上)有機物試料に区分した後、70℃乾燥重量を測定した。                     3.結果と考察 小面積皆伐区と単木間伐区の伐採搬出を行った結果、伐採から集材(山土場)までの生産性は小面積皆伐区6.0m3/人日>単木間伐区4.7 m3/人日となり、約1.3倍小面積皆伐区の方が高かった。また、小面積皆伐区は、伐採木の根本付近に腐りが多く、利用率(伐採材積/出材積)が74%と単木間伐区と比べて16%低かった。利用率が同程度であれば、小面積皆伐区は単木間伐区に比べて約1.6倍生産性が高い計算となる。 伐採前に、伐採の安全性や作業能率を高めるため、「雑刈り」と称した下刈りが行われることがあり、今回の試験区においては、下刈り有り無しで作業能率や安全性を調査した結果、生産性には余り影響を受けず、伐採の安全性についても問題はなかった。 次に、下刈りを行わなかった小面積皆伐区および単木間伐区において、上木伐採による下木損傷調査を行った結果、両試験地とも概ね7割以上が健全であった。このことより、下木の天然ヒノキや広葉樹を利用した更新について、今後期待が持てる結果となった。 伐区毎の開空度は、小面積皆伐区(25×25m)40.9%>同区(20×20m)32.7%>同区(15×15m)29.0%>単木間伐区19.0>無間伐区7.2%であった。 表土流亡について調査した結果、伐採前は下層植生が多くコケ類も生育していたため表土流亡はほとんど認められず、枝葉等の有機物が殆どであった。伐採後は、落葉の季節となり数値的には増えたが、伐採による影響によるものか、今後継続して調査を行う必要がある。

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© 2004 日本林学会
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