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第115回 日本林学会大会
セッションID: K10
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GPS信号のSNRと木質量の関係
*澤口 勇雄斉藤 裕子
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キーワード: GPS, SNR, 森林
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抄録

1.目的 森林内でのGPS測位精度は,開放地に比較して低下することは知られている。低下の原因には,電磁波が樹木を通過することによる,信号の遮断,SNRの低下,マルチパスが考えられる。本研究では,森林内における測位精度予測を向上させるために必要な,木質量とSNRの関係を明らかにし,仮想森林でシミュレーションを行い,樹木が信号の遮断,SNRの低下に及ぼす影響について考察した。2.材料および方法 実験材料には,スギ板(約24cm×40cm×3cm),スギ針葉部,アメリカミズメ葉部の3種類を用いた。実験は岩手大学構内で,2003年9月_から_10月にかけて7日間行った。3種類の実験材料について,それぞれ3回の繰り返した。計測は固定した受信機を段ボール紙の枠で囲み,板は段ボール紙の枠上に直接積み重ねた。葉部は段ボール紙で作成した容器に材料を入れ積み重ねた。板(8枚)は1枚ずつ積み重ねた。針葉部は6段階,広葉部は3段階に分けて容器に投入し,重量と体積を計測した。板,針葉部,広葉部を単位に,各段階で約2分間,初回と最終回は受信機を遮蔽する木質がない状態で計測した。解析には100秒のデータを用いた。GPS受信機はTrimble社ビーコン内蔵型DGPS受信機AgGPS124である。受信機はノートパソコンとRS232Cで接続し,1秒間隔で受信した。3.結果SNRを目的変数(Y),木質抵抗量(X1),衛星仰角(X2),木質部透過距離(X3),実験日(X4),実験材料種類(X5)を説明変数に数量化_I_類で解析を行った。木質抵抗量は各材料の全乾密度に木質部透過距離を乗じた値である。重相関係数は0.82だった。 偏相関係数,レンジから判断して,SRNへの影響は大きい因子順に,仰角>木質抵抗>実験日>実験材料>透過距離と考えられた。実験材料別に行った数量化_I_類のレンジは,何れの材料でも仰角のレンジが最も大きく,次いで木質抵抗量だった。木質抵抗量のレンジは,板>針葉部>広葉部となった。 仰角50°以上でのSNRは比較的安定する。そこで,仰角50°以上のデータから木質抵抗量とSRNの関係を推定した。 スギ板と針葉部は関係が認められたが,アメリカミズメ葉部は認められなかった。4.考察実験結果を基に樹冠下におけるSRNをシミュレーションした。シミュレーションに用いたスギ林は植栽間隔1.5m×1.5mで立木密度は1600本/ha,平均樹高19.5m,平均胸高直径25cm,平均枝下高15.5m,平均最大樹冠直径4mとした。植栽時の植栽列数は90×90列で,枯損率に従い一様に配置した。樹幹,樹冠の形状は標準木の測定値を用いた。GPS衛星の位置は一様で,各立木配置で250回の信号を発信した。立木配置の繰り返し回数は4回として,木質抵抗量を得た。仰角とSNRの関係は深いが,変動も大きい。このため,木質抵抗のない開空地での仰角とSNRの関係をシミュレーションするために累積分布の逆関数による乱数を発生させて,開空地での仰角とSNRの関係を求めた。この開空地でのSNRに木質抵抗量の係数に,シミュレーションで得た木質抵抗量を乗じて,樹木に起因するSNRの低下量とした。シミュレーションの結果,測位率は既往の調査結果にほぼ一致した。

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© 2004 日本林学会
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