日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: K12
会議情報

利用
自発的計画手法を用いた林道の縦断勾配の設計
*有賀 一広Sessions JohnAkay Abdullah
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.目的 現在、アメリカ北西部において林道からの土砂が河川へ流れ込み、サーモンの生息に影響を与えることが大きな問題となっている。そこで本研究では、林道からの土砂流出を減少させながら建設コストも最小化する林道設計プログラムの構築を目的として、まずは自発的計画手法を用いて建設コストを最小化する林道の縦断勾配の設計プログラムを構築した。2.既往の研究 Abdullah Akay(2003)は3Dグラフィックスを用いた林道設計プログラムTRACERを開発した。このプログラムはLIDARから取得された高解像度DEMを利用して3Dで地形を表し、林道設計者がこの画面上でIP点、縦断勾配の変化点を指示すると、自動で平面曲線、縦断曲線、横断面を作成し、建設・維持・運材コストを計算する。そして、縦断勾配変化点の高さを変えながら、Simulated Annealing法を用いてコストが最小となる縦断勾配を決定する。さらに、このプログラムではSedmodlによって林道から河川へ流れ込む土砂量を算出する。3.方法 本研究では平面曲線を設定した後、自動でコストが最小となる縦断勾配の変化点と高さを決定するプログラムを構築する。縦断勾配の変化点と高さの探索には遺伝的アルゴリズムとタブーサーチの2種類の自発的計画手法を用いた。また、切盛土量の配分には線形計画法を利用して最適化した。勾配変化点での高さの探索では地山から上下10mの範囲を1m間隔でまず探索し、その中で最適であったものを用いて、上下1mの範囲を0.1m間隔にて再度探索して、その中で最適なものを解とした。 林道を手書きにて設計したところ、平均勾配14.1%、17のNo.点と4の勾配変化点からなる延長345.7mの林道となった。勾配の最大は14%に設定したが、延長100m以内に限り最大18%まで許容した。車道幅員は2.5m、切取法面は1:0.8、盛土法面は1:1とした。建設コストの算出にはアメリカ林野庁のCost Estimating Guideを利用した。手書きにて設計した林道の建設コストは$315.65/mである。4.結果 まずは勾配変化点を手書きにて設計したところに設定して、コストが最小となる高さを総当りで決定した。この計算には87時間を要した。そのときの建設コストは$283.83/mである。遺伝的アルゴリズムによって見つけられたコストは$284.42/mで、計算時間は51分であった。また、タブーサーチでは$291.63/mで、計算時間は37分であった。したがって、この2種類の自発的計画手法とも短時間で比較的良い結果を見つけ出したことが分かる。 次に縦断勾配の変化点の探索を試みた。遺伝的アルゴリズムでは7時間20分で$147.73/mを、タブーサーチでは2時間で$165.47/mを見つけ出した。この場合、総当りによる最適解の探索には膨大な計算時間を要するため算出していないが、手書きにて設計した林道と比較して半分程度のコストになっており、両手法とも効率的に比較的良い結果を見つけ出していると考えられる。この2種類の手法では遺伝的アルゴリズムがタブーサーチよりも良い結果を見つけ出している。一方、タブーサーチは短時間で比較的良い結果を見つけ出しているため、最初にタブーサーチで探索し、次に遺伝的アルゴリズムで探索するハイブリッド手法を開発すればより効率的に良い結果を探索することができると考えられる。5.まとめ このプログラムではAkay(2003)と同様にSedmodlによって林道から河川へ流れ込む土砂量を算出している。今後、林道から河川へ流れ込む土砂量も考慮に入れて、平面・縦断線形を同時に最適化するプログラムを構築していく予定である。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top