日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: K16
会議情報

利用
列状間伐における土砂流出
*大町 陽平鈴木 保志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1. 目的 世間の関心が生態系に集まっている現在では、森林施業により環境面に与える負荷をいかに減らすかが重要である。また、低コストで行える間伐方法として列状間伐が注目されている。しかし、列状間伐地では、裸地化された伐採列における土砂流出の問題が懸念されているが詳細は明らかにされていない。そこで本研究は列状間伐において土砂流出の面から、森林環境に与える影響を調査した。 2. 調査方法 調査地は高知県香美郡夜須町に位置し、標高約340m付近、平均傾斜40度を越える湾曲した扇状の急傾斜地にある林齢43年生のスギ,ヒノキ混交林である。コレクター集材により3残1伐の列状間伐+定性間伐(間伐率30_から_40%)が2002年12月に行われた。コレクター集材は残存木を傷めずに横取りが出来る架線集材方法で、列状間伐に適している.。 残存列・伐採列の土砂流出量を測定するために土砂受け箱を使用した。土砂受け箱は塚本(1)と同じ物を用いた。伐採列の向きは斜面に対して平行であったため、残存列・伐採列の変わり目に等高線上に5個ずつ設置し、計30個設置した(図_-_1)。また、雨量計を残存列・伐採列にそれぞれ計16個設置した。設置した土砂受け箱から定期的に流入物を回収し、有機物、れき(粒径2mm以上)、細土(粒径2mm以下)に分別し乾燥重量を測定した。2003年7月から計測を始め、月一回ずつ、計4回流入物を回収した。      また、高知大学農学部の演習林の皆伐地と無間伐地に土砂受け箱を設置し、7月上旬から12月上旬まで計測した。 測定した土砂流出量のデータは、各回収期間の日数の違いと雨量の影響を消すために、各期間の雨量で割った値を使用(2)し分散分析した。要因項目は「粒径」「土砂受け箱設置位置」「残存・伐採列」「回収日」に設定した。3.結果と考察 分散分析の結果は、「粒径」「回収日」「土砂受け箱設置位置×残存・伐採列」「粒径×土砂受け箱設置位置×残存・伐採列」で有意な差が見られた。注目すべき点は「残存・伐採列」には有意な差が見られなかったが、「残存・伐採列×土砂受け箱設置位置」では交互作用が現われた点である。特に調査査地中部に位置する残存列で土砂流出量が増加し、伐採列では土砂流出量が減少する傾向が見られた(図_-_2)。これは、調査地中部の残存列の立木密度が低く林冠がうっ閉していないことにより、林冠による雨滴衝撃の緩和効果をあまり受けられなかったためと考えられる。3残1伐のように伐採幅の狭い列状間伐地では立木密度が低くなければ、伐採列の土砂流出の影響をあまり受けないことが示唆された。 皆伐地における調査では、皆伐地と無間伐地では皆伐地のほうが土砂流出量が少ない傾向が見られた。これは、この皆伐地が南向きの斜面であるため日当たりがよく下層植生が繁茂しているので地表面の雨滴衝撃が緩和されたためだと考えられる。今回調査した列状間伐地は北向きの斜面であるため日当たりが悪かったが、南向き斜面のような下草植生が生える場所では伐採幅を広げても、施業から1年後程度では土砂流出の影響をあまり受けないことが示唆された。 

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top