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第115回 日本林学会大会
セッションID: K15
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軽架線による間伐集材被害木の5年後の経過
_-_損傷部の外傷と内部変色_-_
*鈴木 保志
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抄録

1. 目的
 現在の日本における伐出作業は、要間伐林齢の人工林資源が多いことや路網の発達などにより、タワーヤーダやスイングヤーダなどの軽架線による間伐が主体となっている。間伐では残存木へのある程度の損傷は避けられないが、そうした損傷がどの程度将来の主伐木の価値に影響するのかについては、定量的に評価できるほどには明らかになっていない。
 軽架線による間伐伐出作業で発生した集材被害木について定置プロットを設定し、継続調査を実施してきた。5年後の事後経過を一部プロットについてはSuzuki(2000)で報告したが、今回は全プロットに関して報告する。

2. 方法
 調査地は、京都大学フィールド科学教育研究センター和歌山研究林において1994から1996年にかけて試作スイングヤーダにより伐出作業が実施された23から44年生(当時)スギ人工林5プロット(計0.668 ha)である。残存木742本中172本に発生した496個の損傷の状態(外見から確認できる外傷)、樹幹上の位置、および大きさ(幅、縦方向の長さ、面積)を作業直後に調査し、作業後5年を経過した1999から2001年にかけて状態の推移を調査した。また、各プロット5本ずつの除伐対象木から損傷部位の円盤(1994年作業の2プロット)あるいは損傷部位を含む長さ1m程度の幹材サンプルを採取し、裁断して内部の変色状況を調べた。

3. 結果および考察
 損傷の状態は、作業直後については樹皮や形成層(内樹皮)の露出により4段階(1から4)に、5年後については痕跡なしあるいは巻込み完了(0)を加えた5段階に分類した(表_-_1)。直後の状態1, 2および5年後の状態0, 1, 2を軽度、直後および5年後の状態3, 4を重度の損傷とまとめて分類すると、直後、5年後とも軽度(I)あるいは重度(IV)と状態の変化がないものが8割程度と多かった(α<0.01, χ2検定)。軽度から重度になったもの(II)は4%と少なかったが、重度から軽度になったもの(III)は14%ほどあった。
 IからIVの分類で損傷の発生直後の大きさを分散分析すると幅のみ有意であった。傾向は、作業直後には軽度と重度の間に認められなかった有意差が、作業後重度で5年後軽度のIIIが5年後重度のIVよりも3cm程度小さい、というものであった(図_-_1)。面積、長さの総平均はそれぞれ118cm2、23.3cmであった。
 変色部については変色部の幅と外傷の幅の比(N = 79)、変色部の厚さ(N = 78)、変色部の樹幹方向の長さと外傷の長さの比(N = 23; ‘95、’96年作業のもののみ)について同様に分析した結果、変色部の厚さのみ有意となった(図_-_2)。傾向は、作業直後についても5年後についても軽度よりも重度の方が変色部の厚さが大きく、IとIVとでは特に顕著で3cmの差があった。
 ただし、変色部の高さは1mの採取サンプル長を超えて変色部が拡大しているものが46個のサンプル中21個あった。それらを分析対象から除いても変色部の高さ比は平均で外傷長さの1.6倍、最大で5.8倍あり、損傷の症状として見逃せないものと考えられる。

4. おわりに
 今年でプロット設置から10年が経過する。今後も調査を続け、経過を追跡したい。また本研究では京都大学和歌山研究林の方々、及び資料木の裁断では高知県森林技術センターの協力を得た。ここに謝意を表す。

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© 2004 日本林学会
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