日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: K19
会議情報

利用
全木集材により発生した土場残材の集積状況と形態的特性
*立川 史郎澤辺 攻青柳 淳森 康弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 素材生産現場におけるプロセッサの使用増加にともなって、造材後に枝条を含む土場残材が1ヵ所に集中して発生するようになってきている。この土場残材により、作業中に土場スペースが狭くなり作業に支障をきたすことや、土場の位置によっては豪雨時に残材が河川に流出して下流域の水害を拡大することなどの問題が生じている。この問題を解決する方法の1つとして、土場残材を運び出して燃料などのエネルギー資源として活用することがあげられる。本研究では、スギ全木材をプロセッサで造材した後の土場に集積された残材の層積と空隙率を測定し、土場残材の集積状況や樹幹部・枝条部別の残材発生量について分析し、全木集材後の土場残材の利用方法について検討した。 調査は岩手県住田町内の伐出作業後の土場4ヵ所におけるスギ残材(43-46年生)を対象に、各土場残材の層積を携帯型のレーザー距離計を用いて測定するとともに、残材サンプルを取り出して、残材の形状について測定した。調査土場のうち1ヵ所は比較として、全幹集材後の残材を対象とした。 全木集材の作業現場1ヵ所あたりの残材層積は平均150.6m3であり、空隙率は平均58.8%であった。空隙率から求めた残材の実材積は、作業現場1ヵ所あたり平均71.7m3であった。作業現場1ヵ所あたりの素材生産量は平均433m3で、残材率(残材実材積/素材生産量×100)は樹幹部のみで平均27.7%、枝条も含んだ場合で平均29.8%であった。樹幹部と枝条部の容積密度数から残材重量を求めた結果、樹幹部で平均21.8乾重t(89%)、枝条部で平均2.8乾重t(11%)となった。 今回の調査結果から全木集材後の残材利用を考えた場合、枝条部重量は樹幹部重量と比較して小さく、また、残材のチップ化や運搬作業の能率という面からも、当面、樹幹部のみ利用した方が効率的であると考えられる。一方、各作業現場の残材は樹幹部と枝条部が混合している箇所が多く、樹幹部のみの利用を考えた場合は、あらかじめ樹幹部と枝条部を分けて集積しておく方が利用しやすい。ただしこの場合、枝条が1ヵ所に集中して放置されることを回避するためには、プロセッサの造材土場をできるだけ分散化して、枝条は極力林地へ還元するなどの工夫も同時に必要と思われる。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top