日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1017
会議情報

生態
苗場山ブナ樹冠における光合成特性の空間変異とその季節変化
*飯尾 淳弘横山 憲高野 正光千葉 幸広角張 嘉孝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

苗場山ブナ樹冠内において、光環境、光合成特性、窒素含有量(N;g/m2)、比葉重量(LMA)の相互関係を生育期間を通して調べた。相対的な光環境(rPPFD)は開葉後に急激に低下した。展開が完了すると、落葉が始まる9月中旬までほぼ一定値で推移した。樹冠最上部におけるカルボキしレーション反応の最大速度(Vcmax)とLMAは開葉後急激に上昇し、6月中旬には最大に達した(Vcmax;55μmol/m2/s、LMA;105 g/m2)。LMAは落葉まで値は変化しなかった。Vcmaxは夏の間高い値を維持しつづけ、落葉の始まる9月中旬から除々に低下した。これらの傾向は樹冠の位置にかかわらずほとんど同じであった。窒素含有量(N;g/m2)の相互関係を季節を通して調べた。それぞれの季節において、rPPFDとVcmax、LMAとVcmaxの関係はそれぞれ高い相関があったが、回帰式のパラメータは季節によって大きく変化した。季節を通して光合成量を推定する場合には、季節に応じて回帰式を変える必要がある。2002年のrPPFDとVcmaxの関係は直線であったが、2003年は飽和型の曲線になった。また、明るい場所(rPPFD>50%)におけるVcmaxと窒素利用効率(Vcmax /N)を比較すると、2003年は2002年よりも30_から_40%も低かった。長期間にわたって光合成量を推定する場合には、季節や空間だけでなく年変動も考慮する必要があるかもしれない。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top