日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1021
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生態
生育形の異なる低木3種(クロモジ、タンナサワフタギ、ツリガネツツジ)の斜面傾斜への地上部の対応様式
*森下 和路嵜元 道徳
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抄録

多雪地の冷温帯林下層に優占的な低木3種(クロモジ、タンナサワフタギ、ツリガネツツジ)について、平坦地・緩傾斜地・急傾斜地における地上部形態を比較し、傾斜の違いへの対応様式と個体群構造の関連を検討した。平坦地における3種の生育形は大きく異なり、タンナサワフタギが単幹型、ツリガネツツジは株内に複数の生存幹を有する著しい多幹型、クロモジは両者の中間的であったが、急傾斜地ではいずれも多幹型となり、高い撹乱圧に対応しているものと考えられた。しかし急傾斜地においては、3種とも地上幹が大きく傾き、樹冠幅が小さく、株内の枯死地上幹数が多かったことから、地上幹が何らかのストレスを受け、株内の回転が速くなっていることが示唆された。特にタンナサワフタギは、平坦地では樹冠幅の大きい顕著な傘形樹冠を発達させたが、急傾斜地では当年枝数が大幅に減少するなど、斜面傾斜の影響を3種中最も強く受けていた。逆に、比較的コンパクトな樹冠を持つツリガネツツジは、斜面傾斜の影響が小さかった。一方、平坦地・緩傾斜地・急傾斜地にそれぞれ設けた100m2調査区で3種の地上幹のサイズ構造を比較すると、タンナサワフタギのみ、急傾斜地で平坦地よりも地上幹長の最大値が小さく、強いL字型分布を示した。多雪地では雪圧が下層樹木の強い撹乱要因となることが指摘されている。特に傘形樹冠を発達させるタンナサワフタギは、急傾斜地の積雪移動の際に抵抗が大きいと考えられ、その結果、大きい地上幹の発達が困難になり、サイズ構造の変化が生じたと考えられる。以上より、地形変化がもたらす撹乱圧の空間的不均一性と、種の形態的特性がもたらす対応様式の種間差が、斜面地形上におけるそれぞれの種の個体群構造に影響していることが示唆された。

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© 2004 日本林学会
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