日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2007
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T5 林教育研究の展開
小学校における情報機器を活用した地域の自然体験学習の取り組み
*松尾 佳秀大崎 智弘安川 直樹阿部 光敏酒井 徹朗守屋 和幸
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抄録

2002年度から全国の小中学校に「総合的な学習の時間」が導入され、地域に根ざした教育、生徒の自主性を重視した教育が期待されている。文部科学省の学習指導要領[1]によると、「総合的な学習の時間」では、「横断的・総合的な課題などについて、自然体験や社会体験、観察・実験、見学・調査などの体験的な学習、問題解決的な学習を行う」ことが新たに必要とされており、各小中学校では具体的な実施方法を模索している。また、パソコンやインターネットなどが導入され、今後ますます情報教育が実践されていくことが予想される。
本研究では、「総合的な学習の時間」において、特に野外での理科教育・社会科教育を主な対象としてモバイル機器を中心とした情報機器の利用方法の確立を目的とした取り組みを行った。
実践概要としては、2003年度、京都市立稲荷小学校では「稲荷のまち&稲荷山 自然調査隊」というタイトルで総合的な学習の時間を行っている。タイトルにも使用されている稲荷山は、小学校に隣接している伏見稲荷大社を含む山で、全員で年に3回稲荷山登山を行う学校林に近い形の山である。稲荷小学校での総合的な学習の時間の進め方は、年間の学習テーマが設定されており、生徒はその枠内で各自の課題を設定し、課題の解決方法も自ら考案し、実行する。課題解決に向けた方向付けは、中間的におこなうクラス内での意見交流会と、担任の教師からの指導を元にして行う。まず小学生が独力で課題解決の方法を考える。ある程度独力で課題に取り組んだところで、意見交換会を行い、課題解決への方向修正をおこなう。次に、学習課題が似ている生徒同士でグループによる課題解決をおこなう。最後に、個人で発表用コンテンツを作成する。今年度の具体的な日程としては、稲荷山取材活動を7月1日・8月29日、課題決定を9月から10月上旬にかけて、調べ学習&コンテンツ作成を11月下旬から2月中旬まで、意見交流会を12月5・12日という形で行った。
システムの概要としては、稲荷小学校での総合的な学習の時間に導入したシステムとしては3つある。まず、取材活動時に導入したPDA・GPS・デジタルカメラを用いた取材システムは、以前に野外環境学習の支援を目的として構築したPosInfoシステム[2]を小学生用のインタフェースと取材用の機能に改良したものである。
次に、課題決定時に導入した情報交換ソフトは、取材システムを使って生徒が取材したファイルを一括して閲覧し、興味を持った対象物に関する写真などのファイルを自分専用のコンテンツ素材として選択的に保存するものである。
最後に、コンテンツ作成時に導入したコンテンツ作成ソフトは、情報交換ソフトで絞り込んだ素材を用いて、選択形式のクイズ問題を作成し、取材システムに載せるためのコンテンツ作成を支援するソフトである。
結果としては、情報交換ソフトでは、他人の素材を、生徒が自分専用のコンテンツ素材として保存したものが、5年生で78.0%、6年生で73.4%であった。評価の結果、操作性と機能および楽しさに対する主観的評価は良好と言うことができ、ストレスなく情報収集、共有をおこなう最低限の機能が満たされているといえる。

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© 2004 日本林学会
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