日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2019
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林産
マツタケ子実体サイズと環境的要因及び遺伝的要因の関係
*成松 眞樹練 春蘭宝月 岱造
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抄録

菌根性食用きのこマツタケは市場価値が高く、培養菌糸の接種による林地での子実体生産が各地で試みられている。一方、販売価格の決定要因となる子実体サイズは、環境的要因に影響を受けるとされているが、遺伝的要因の影響は不明である。そこで本研究では、遺伝的要因(遺伝子型)と環境的要因(発生期の気象条件、菌根層深度)が子実体のサイズ規定に及ぼす影響を検討した。
1. 方法
1.1 子実体発生状況調査:岩手県内陸部のアカマツ林で、2001_から_2003年の3年間に発生した子実体の発生日、生重量、全長、菌根層深度を測定/記録した。各子実体毎に、発生日_から_採取日間の日平均気温及び日降水量を積算し、これを気象条件とした。
1.2 ジェネットの決定:子実体サンプルからCTAB法でDNAを抽出し、4種類のSSRマーカーを用いてSSR多型解析を行い、SSR遺伝子型(ジェネット)を決定した。
2. 結果
日平均気温積算値及び日降水量積算値と、子実体重量との関係について回帰分析を行った結果、いずれも有意な相関が認められなかった。一方、菌根層深度と子実体重量の間には、弱いが有意な相関が認められた。子実体重量、全長、菌根層深度間には、いずれも有意な相関が認められたことから、菌根層深度が子実体全長を介して重量に影響を及ぼしていると考えられた。ジェネット毎の子実体重量及び菌根層深度について分散分析を行った結果、いずれもp<0.001でジェネット間に有意差が認められた。以上の結果から、子実体重量は発生期の気象条件よりも遺伝的要因もしくは菌根層深度に影響を受けると考えられた。従って、子実体生産を目的とした人工接種に際しては、菌糸の分離源となった子実体のサイズを考慮して、接種に用いる系統を選択する必要が有ると思われた。

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© 2004 日本林学会
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