日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2052
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航空レーザー測距法によるカナダ北西部亜寒帯林_-_ツンドラ移行帯の地上・地下バイオマス
*都築 勇人日下部 朝子平井 杏子池添 浩之末田 達彦
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抄録

1. はじめに北半球の高緯度では顕著な温暖化が予測されているとともに、これに伴う広範な植生の変化が懸念されており、両者の検出が重要な研究課題となっている。通常、植生の変化とは、種組成の変化に代表される定性的な変化を指すが、われわれはその前兆として現れる立木蓄積、バイオマス、葉面積指数などの量的な変化をとらえるべく、北半球高緯度の亜寒帯林を中心に航空レーザー測距を行い、これによって得られる植生の縦断形状(植生プロフィール)から広域にわたる森林の立木蓄積、バイオマス、炭素蓄積、葉面積指数を推定している。この植生プロフィールの縦断面積は、林木が高くて密生しているほど、すなわち蓄積やバイオマスに比例して大きくなるので、この回帰を用いれば航空レーザー測距により広域にわたる森林の諸特性を正確に推定することが可能となる。2. 方法本報では、Fig. 1に示したカナダのユーコン準州ドーソン(64.05°N)から北西準州イヌビック(68.30°N)までの南北750 kmの亜寒帯林北部からツンドラとの移行帯までのトランセクトを対象に、航空レーザー測距とその航跡直下17林分でのバイオマス実測調査から、広域にわたるバイオマスを地下部も含めて推定した。航空レーザー測距では地下部分の形状を計測することは出来ないので、地上調査においてバイオマスを地上部だけでなく地下部についても測定し、前者に対する後者の割合から、広域の地下部も含むバイオマスを推定した。3. 結果と考察Fig. 2に、750 kmにわたるトランセクトの地上部、地下部、合計のバイオマスをそれぞれ0.1 kmと10 kmの間隔で示した。バイオマスの平均は、地上部8.0 t dm/ha、地下部1.9 t dm/ha、計9.9 t dm/haであった。バイオマスは南側2/3の区間では北に向かって漸減し、北側1/3の区間では北に向かって漸増する傾向にあった。南側の区間については、トランセクトを南北の方向に配置させていて、また気温も南端より北端で低いことから、気温の南北勾配によることがわかる。北側の区間については、大河マッケンジーのデルタに位置し、気温の南北勾配よりもデルタの要因が大きい。デルタでは水路が網の目状に入り組みながら下流の北に向かって水量は増していく。川の水はこの地域の植生の存在と成長とを抑制する永久凍土を融解するので、北に向かっての水量増加により植生が豊かになるということからも、推定の結果は妥当であると考えている。これとは別に実施したカナダ中部の600 kmのトランセクト(Fig. 1)も併せると、南はプレーリーへの移行帯から亜寒帯林を経て北はツンドラにまで及んでいて、_丸1_3つの植生帯には森林蓄積という量で見ても明瞭な違いが認められること、_丸2_亜寒帯林部分のバイオマスの分布中心はプレーリー側に寄っていることを明らかにした。バイオマスのこの分布様式は南北の環境勾配を反映したもので、分布中心から南に向かっては乾燥が、北に向かっては寒さが森林の存在と成長を抑制している。

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© 2004 日本林学会
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