日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2056
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新しいさし木ヒノキ品種遠野非着雪桧について
*柴山  善一郎今安 清光早田 佳史山本 武
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抄録

遠野地方で発見された極めて珍しいヒノキの系統を知りたいからと, あるご縁により,平成12年10月下旬にその枝葉の一部が高知大の筆者らの元に持ち込まれた。それを受けて,その鑑定を本学の徳岡正三教授にお願いした。その結果,それは「葉の形」,「葉のやわらかさ」,「気孔線帯の形」をみると「ヒノキ」の形質が強いと判断されが、「葉のサイズ」をみると「サワラ」の形質も一部に有している珍しいタイプのヒノキと鑑定された。その系統を鑑定するまでには至らなかった。その枝葉を冷蔵庫に保管していたが,ヒョイと思い立ち、季節はずれの時期に,交流のあるさし木名人で篤林家の石田多美雄氏にさし木苗育成という無理なお願いした。その願いを受け入れていただき、石田氏はビニールハウス内の電熱温床パットで大切に育成し, 遠野由来の珍しいさし木ひのき苗5本の育成に成功した。そのうちの3本が石田氏の山林に平成14年12月に植えつけられ、それらの苗木成育調査(樹高,幹径,枝ごとに着生高・枝元径・枝の長さ・岐出角・着生方位)を平成15年12月に行って、その結果をまとめた。調査結果を3本の平均値で示すと次のようである。樹高は70.7cm, 樹幹長は92.3cm, 幹直径(地上高30cm),枝着生本数は50cm当たり16.3本. 枝元径は0.51cm, 枝長は29.3cm,枝岐出角10.7°,岐出方位角には大きな偏りは見られなかった。石田氏(これまで多くのさし木ひのき品種を育て豊富な経験を持つ)は「この木は他の品種と比べて太りがいい」との総評であった。枝の岐出方位に大きな偏りは見られなかった。今後、この珍しい遠野由来のさし木ひのきが加齢にともないどのような形質を示すのかを追跡調査するとともに,他のさし木品種との成長比較などをしていく予定である。

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© 2004 日本林学会
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