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第115回 日本林学会大会
セッションID: P2066
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経営
丹沢山地玄倉川流域における森林モザイクについて
*黒岩 祐子増谷 利博水本 真衣
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抄録

1.はじめに 森林の姿は時代背景、管理主体、利用方法、自然環境によって大きく変化する。今日存在している森林はこれらの要素・原因が重なりあって成立していると考えられる。本研究では流域内の森林モザイク、特に形状特性について検討した。2.対象地 対象地域は神奈川県北西部に位置する丹沢山地の西部にある玄倉川流域であり、蛭ヶ岳(1673m)、丹沢山(1567m)、鍋割山(1272m)、檜洞丸(1551m)、丹沢湖に囲まれた流域である。面積は約4800ha、30度以上の傾斜地が流域の70%を占める急峻な地形である。3.資料及び研究方法 使用した資料は、林相区分のため航空写真を、林齢等の小班属性を得るために神奈川県発行の森林簿デジタルデータを、地形データを求めるために森林基本図(1/5000)を用い、GIS(Arcview3.2)によって入力、デジタル化した。方法としてまず、流域全体の土地利用を針葉樹、広葉樹、草地・竹林、森林以外(渓流・林道)に区分し、前三者のパッチ面績、フラクタル次元(D)、形状指数(SI)を算出した。つぎに小班単位での面績、フラクタル次元(D)、形状指数(SI)を算出した。パッチとは、例えば針葉樹の小班が隣接している場合、一つのパッチとみなす。4.結果及び考察 流域を土地利用別に区分した結果、区画された総個数は477個(針葉樹333個、広葉樹84個、草地・竹林6個、森林以外54個)、全小班数は1416個(針葉樹744個、広葉樹609個、草地・竹林6個、森林以外57個)であった。(1)面積 流域における針葉樹の面積は661.9ha(13.7%),広葉樹3810.6ha(79.1%),草地・竹林8.1ha (0.2%),森林以外338.3ha(7.0%)であった。その中で針葉樹及び広葉樹のパッチ面積を0.5ha未満, 0.5ha_-_1ha未満, 1ha_-_2 ha未満, 2ha_-_5ha未満, 5ha_-_10ha未満, 10ha以上に区分した。その結果、流域全体では0.5ha未満のパッチ数の割合が67.3%であり、針葉樹、広葉樹ともに0.5ha未満のパッチの割合が高い。小班単位では2ha未満の小班が針葉樹では88%、広葉樹では67%であった。10ha以上の小班割合は針葉樹では0.8%、広葉樹では13%であり、針葉樹では2ha未満の小班の割合が、広葉樹では面積の大きい小班の割合が高い。(2)フラクタル次元 フラクタルDを1.25未満, 1.25_-_1.5未満, 1.5_-_1.75未満, 1.75_-_2.0に区分した。流域全体ではD=1.25-1.50未満のパッチの割合が76.5%であり、1.25未満のパッチは存在しなかった。針葉樹・広葉樹別にみると1.25_-_1.5未満では針葉樹、1.5_-_1.75未満では広葉樹の割合が若干高く、広葉樹の方が多少複雑な境界線のパッチが存在する。針葉樹、広葉樹、草地・竹林のいずれも1.75以上の複雑な境界線のパッチは存在しなかった。また、小班単位でのDの値は広葉樹と針葉樹では、ほとんど差はなく、約9割が1.25_-_1.5未満の間にある 。(3)形状指数 状指数は1.25未満, 1.25_-_1.5未満, 1.5_-_1.75未満, 1.75_-_2.0,2.0以上に区分した。流域全体では2.0以上の割合がやや高いが、突出したカテゴリーはみられない。針葉樹・広葉樹別にみると針葉樹では形状指数が低い値の割合が高く、広葉樹では2.0以上のパッチの割合が高い。小班単位で値を算出した結果、1.2未満では針葉樹の割合が高く、広葉樹では2.0以上の小班割合が高い。5.おわりに 玄倉川流域の森林モザイクの特徴は面積については針葉樹、広葉樹の3分の2が0.5ha未満の小面積のパッチであり、広葉樹は10ha以上の小班が針葉樹と比べ多く存在する。形状についてはパッチ・小班ともにフラクタルDが1.25_-_1.5未満でありパッチ・小班の境界線が比較的なめらかな曲線をしている。広葉樹の場合は形状指数が2.0以上の細長い形状のパッチ・小班の割合が高いことが明らかになった。

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