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第115回 日本林学会大会
セッションID: P2073
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経営
京都議定書3条4項における森林面積算定に関する研究
*中島 徹広嶋 卓也
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抄録

京都議定書3条4項における森林面積の算定に関する研究○中島 徹・広嶋 卓也(東大農) _I_ はじめに 京都議定書が規定する2008年から2012年にわたる第一約束期間において、日本は1990年を基準年とする6%の二酸化炭素排出削減を課されている。他方、そのうちの3.9%については、森林による炭素固定量を算入することが認められており、6%という削減目標を達成する上で、森林に期待される役割は大きい。 この点、京都議定書3条4項は、吸収源として認定される森林を、1990年以降に施業が行われた森林(以下3条4項林)に限ると規定する。したがって、削減目標のうち3.9%が森林によって達成されるか否かを明らかにする上で、このような3条4項林に該当する森林面積を算定することは重要である。 そこで、本研究では、森林簿、施業履歴などの統計データを用いて、京都議定書3条4項における森林面積を算定することを目的とするものである。_II_ 方法 対象地は、岐阜県の民有林である。岐阜県では県全域にわたり森林に関する統計データが整備されている。本研究では、これらのデータを用いて、1990年から2001年にかけて3条4項林に該当する森林の面積を算定することを試みた。 使用した統計データは、県全域の森林簿、1990年から2001年までの森林施業履歴である。森林施業履歴は、施業が行われた年度、施業の種類などが記載されている。このうち、全施業面積比で4分の1の施業が、どの小班になされたものか特定可能である。算定の対象である3条4項林は1990年以降に一度でも施業がなされた森林である。したがって、基本的には森林になされた施業面積がそのまま3条4項林の面積となる。しかし、同一面積に複数回施業がなされた場合等、単純に施業面積を累積することは3条4項林の重複算定に通じる危険性がある。そこで以下のように施業面積の重なりを除去する処理を行った。まず、ある小班について、一度しか施業がされていないケースでは、施業面積が小班面積を場合は、そのまま3条4項林の面積として算入した。これに対し、同一小班に複数回施業がなされた場合は、各施業面積を順次累積していき、小班面積に達した時点で、以降なされた施業面積は算入しないこととした。一方で、施業履歴について前述したように、特定年度の市町村によっては、行われた施業がどの小班になされたものかが不明なものがある。このような施業面積は、対応する小班面積が確定できず、小班面積によって上記のように重なりを除去することができない。そこで、対象小班が特定可能な施業面積について、重なり除去を行う前と、行った後との比率を求めた。さらにこれを換算係数として施業の対象小班が不明な施業面積に乗じ、重なりを除去したものと近似した。なお、換算係数にはばらつきが生じるため、施業面積の推定値の信頼区間を求めた。_III_ 結果以上の方法から得られた岐阜県の民有人工林に関する2001年時の3条4項林の面積は下表のようになる。面積算定においては、上記信頼区間の上限、平均、下限についてそれぞれ行った。その結果岐阜県の民有林の人工林に関して、下限で45%、上限で72%程度が3条4項林の面積としてカウントされると推定された。もっとも、施業履歴のデータとして計上されていない施業面積もあるものと考えられることから、実際の3条4項林の面積は、より大きいものと予想される。今後は、年度ごとの推移を踏まえ、3条4項林の面積が将来にわたってどのような拡大を呈するかについてシミュレーションを行う予定である。

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© 2004 日本林学会
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