日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2074
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経営
鹿児島県スギ人工林における収穫予想表の作成_II_
異なる調整手法による構成数値の比較
*長濱 孝行
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抄録

 鹿児島県(以下「本県」)においては,スギ人工林管理基準として,既存の鹿児島地方スギ林林分収穫表(1965)及び九州地方スギ人工林林分密度管理図(1980)を適用してきた。しかしながら,前報(長濱,2003)のとおり,現実林分と構成数値に差が生じていること等が問題視されていることから,本県の人工林レベルでの基準資料を検討してきた。今回は地位区分を再度吟味し,これを基準とした収穫予想表を調製することとした。しかしながら,収穫予想表の調製には幾通りか存在することから,今回は家原(1990),猪瀬(1992)の調製手法を用いて構成数値を比較した。 解析に用いたスギ人工林データは前報と同じく653点を用い,異常資料を棄却した後,地位区分について曲線式を再検討した。家原(以下「家原式」)は林分密度管理図を構成する諸関係式から収穫予想表の構成数値を決定し,一方,猪瀬(以下「猪瀬式」)は林分構成因子間の相互関係式から構成数値を決定している。副林木については,いずれの手法についても主林木の前期・後期の本数差で積算した。 地位区分については,決定係数の最も高かったRichards関数で近似でき,これを地位_II_等地の中心線とした。この中心線から各林分データの標準偏差×2を分布の範囲とし,その範囲内で3区分した。 従来の地位曲線と比較すると,60年生時で地位1区分程度の上昇変化がみられた。 次に,収穫予想表の構成数値の中でも主要因子である胸高直径,幹材積を比較した。いずれも従来の構成数値を超える傾向を呈し,従来版の過小値を裏付ける結果を得た。家原式では胸高直径が,猪瀬式では幹材積が,高齢になるに伴い増加傾向が大きくなった。しかしながら,ha当たり本数に対応する説明変数が家原式では林齢,猪瀬式では胸高直径であることから,このことが上述の結果の要因の一つであることが推察された。 従来より問題視されている林分密度管理図と収穫予想表の構成数値の差を考慮すると,家原式を採用していくことが望ましいと思われる。また,ha当たり本数の減少曲線については,林齢に対応させるのではなく,収量比数を用いて上層樹高から逆算する方法がスギ人工林管理基準を策定する観点上望ましいと考えられる。これらにより,収穫予想表の構成数値は林分密度管理図上で一致することになる。 しかしながら,本県の平均的なガイドラインとして位置付けられるため,環境因子等の調整係数を導き,地域性を考慮していく必要がある。

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© 2004 日本林学会
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