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第115回 日本林学会大会
セッションID: P2077
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経営
長伐期施業に対応したタテヤマスギのシステム収穫表
*嘉戸 昭夫田中 和博
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抄録

1. はじめに田中(1991)は林分表と樹高曲線から将来の林分表と樹高曲線を予測するシステム収穫表「シルブの森」を開発した。これにより、平均直径、平均樹高および林分材積だけではなく直径階別の立木や丸太の本数の予測も可能になった。 嘉戸・田中(1995)は富山県の主要スギ品種であるタテヤマスギを対象に伐期齢を50年生程度とした「シルブの森」を調整した。しかし、近年、木材不況をはじめとする様々な原因によって人工林の伐期齢を従来以上に延長する傾向が強まり、それに対応したシステム収穫表が必要になってきた。そこで、長伐期施業にも対応したタテヤマスギの「シルブの森」を調整する目的で、前回の調査資料に新たに調査した高齢林の資料を加えてシステム収穫表の成長パラメータを算出した。2. 「シルブの森」の成長モデル 「シルブの森」で使われている直径成長モデルは、定期直径成長量と期首直径との関係を示す確率論的モデルである(Tanaka、1986)。 3.資料 前回用いた毎木調査資料323箇所に、新たに高齢林を中心に調査した44箇所の資料を加えて林分平均の胸高断面積と立木密度および平均樹高の間に成り立つ等平均樹高線を求めた。また、期首直径と定期直径成長量の関係および地位指数曲線を調べる目的で、林齢53_から_110年生の6林分で合計48本について樹幹解析を行った。 4.結果 本調査で得られたシステム収穫表の成長パラメータの概要は以下の通りである。_丸2_ 地位指数曲線 「シルブの森」では,平均樹高Hの成長を次式のMITSCHERLICH成長曲線で表し、地位指数曲線としている。H(t)=MH(1_-_LH・EXP(_-_kH・t))これまでは地位指数曲線のkHを一定として取り扱ってきた。しかし、樹幹解析の資料に、この成長曲線をあてはめた結果、各成長パラメータが調査林分によって異なり、高齢林分ほど晩生型の成長を示す傾向が認められた。この原因については今後さらに検討する必要がある。 _丸2_x切片C(t)と平均直径D(t)の関係 定期直径成長量と期首直径の間に直線関係があり、D(t)とC(t)の差κは平均直径や樹齢の増加に伴って増大する傾向があった。この結果から、回帰直線の傾きを決めるκを林分の成長に伴って変化させることが必要と考えられた。   κ=0.698 D(t)_-_4.74 (r2=0.655)_丸3_最大林分断面積λの推定 林分の平均断面積に対する等平均樹高線の常数を平均樹高のべき乗式で表し、この式から各平均樹高における最大林分断面積λを推定した。さらに、λの平方根と平均樹高Hとの関係にMITSCHERLICH成長曲線を当てはめた。_丸4_平均直径の成長曲線 平均直径は次式で表されている(田中、1991)。D(t)=1/(ρ+qα)0.5・MD(1_-_LD・exp(_-_kD・t))ここで、MD、LD、kDは成長パラメータで、ρは立木密度、qは間伐のたびに変化する補正項、αは平均樹高の関数である。MDはλに比例することから、平均直径の成長は樹高成長と密接に関係しているといえる。したがって、晩生型の樹高成長を示す林分では、高齢林であっても成長量の低下が比較的小さくなると推測される。事実、晩生型の樹高成長を示した上市試験地では、95年生時の平均年輪幅は2mmで、材積成長量が17m3/ha/年であった。

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© 2004 日本林学会
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