日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2105
会議情報

利用
林道・林分内の光量子束分布
*高木 俊介
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1. はじめにわが国の森林の6割を占める人工林を適切に管理するためには、下刈り、除伐、枝打ち、間伐などの、森林保育作業を行なう必要がある。そのためには多くの人手が必要であるが、将来的に林業従事者の絶対数が足りなくなることが予想されることから、森林作業の効率を向上させなければ適切な管理が行なえなくなるであろう。作業効率を向上させる方法の一つに、林道・作業道の密度を高めることによって、機械を利用しやすくしたり、通勤時間を短縮するという方法がある。また、低コストで作業可能な林道に近接した林分のみを施業対象とするという考え方も近年あることから、適切な管理を行なうための高密度路網の重要性は増している。しかし、林道・作業道を開設すると、隣接する森林内の微気象は大きく変化し、その中に生息する植物個体の生理状態に影響を与えると考えられる。すなわち、森林作業を効率的に行なうために高密度路網を整備することによって、森林内に立ち枯れなどの負の影響が出、健全な森林を維持できなくなる危険がある。したがって、林道開設により、人工林内に生じる影響を開設前に評価する必要がある。そこで本研究では、林道・作業道が隣接する人工林の林内環境に与える影響の中で、特に林道開設によって大きく変化する光環境へ与える影響を明らかにすることを目的とする。このために昨年の114回大会では、光量子束の変化が林縁における急激なものから林内における緩やかなものへと変わる点を影響範囲と考え、下層植生との間に相関が見られることを示唆したが、その適合性は不十分であった。そこで今回は、各調査地点における光量子束の分布形を分析することによって、光量子束の林縁からの変化を再度考察する。2.調査方法 調査は、東京農工大学付属演習林FM唐沢山内の4ヶ所と、FM草木内の1ヶ所の計5ヶ所で行なった。表-1に示すように、各調査地の立地条件、林内の環境は異なる。林内の光環境について本調査に先だって予備調査を行なった結果、林内の光量子束は林道から離れるにつれて低下するが、その変化量は林縁から林内5m付近までが顕著であると考えられた。そこで、光量子計(アレック電子製Ms-Mark_V_)を用いて、林縁を0mとして林内5mまでの1m毎の点と10mの計7ヶ所と、林外光量子束を測定するために常に日の当たる林道上1ヶ所で同時に計測を行なった。各調査地の計測は、調査地1、3については10:00_から_14:00の間に1秒間隔で、調査地2、4、5については、それぞれ、13:10_から_16:10、9:30_から_15:30、11:30_から_14:40の間に1分間隔で行なった。また、光環境の変化と密接に関わると考えられる、下層植生の種数、個体数、被覆率を調査した。3. 結果と考察 林縁から林内へと入るにつれて、光量子束の平均値、分散とも小さくなり、一定以上林道から離れると、両者とも一定値に収束する(図-1)。この平均値が収束するまでを林道の影響範囲と考えると、その地点は前報の結果と一致する(1)。計測時間が長くなると、計測中に天候が変化し、林縁から入射する光量子束は変化する。また、樹冠頂部から太陽光が入射することによって、林内の光量子束に影響すると考えられるが、この影響も太陽光の入射角によって変化するであろう。そこで、光量子束の計測値を5分毎に分けて時刻間の比較を行なった。その結果、同じ調査地においても、時間帯によって光量子束の分散が極端に大きくなる場合があり、この時、光量子束の平均値も他の時刻と大きく異なった値となる。したがって、分散が極端に大きい時間帯のデータを除いて考えることによって、各調査地における光量子束変化の特徴が得られると考えられる.

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top