日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3028
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造林
中国黄土高原における生態系回復に関する基礎的研究(2)
延安周辺における樹木の乾燥耐性
*山本 福壽山中 典和Du sheng大槻 恭一Han RuilianLiang ZongsuoHou Qingchong
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抄録

中国の黄土高原において郷土樹種を用いた生態系回復を目指した研究を行っている。今回は、黄土高原に導入されている外来樹種のニセアカシアと郷土樹種数種の水分生理特性から見た乾燥耐性について測定を行った結果について報告する。調査は黄土高原の中心部にあたるー「西省延安市郊外の公路山(N36°25′40″、E109°31′53″、alt.1353m)で行った。延安市一帯は、乾燥による森林限界付近と考えられており、延安地域を境に北に行くと森林は見られなくなり、潅木・草原地帯になる。調査地に最も近い観測点である延安市内の気象は1982年から1998年までの統計で、年平均気温は9.9℃、年降水量は517mmである。2003年8月22日に公路山に植栽されたニセアカシア(Robinia pseudoacacia )及びこれと同一場所に自生する郷土樹種8種(リョウトウナラQuercus liaotungensis,Syringa oblata, Armeniaca sibirica, Rosa hugonis, Acer stenolobum, Caragana microphylla, Pyrus betulaefolia,Platycladus orientalis)について夜明け前と日中の木部圧ポテンシャルを測定した。これに加え、さらに郷土樹種4種(Cotoneaster multiflorus, Ostryopsis davidiana, Spiraea pubescens, Buddleja alternifolia)については日中の木部圧ポテンシャルを測定した。 また、夜明け前と日中の木部圧ポテンシャルの両方を測定した樹種の大部分について、p_---_v曲線法による耐乾性の測定を行った。水ポテンシャルの測定はすべてプレッシャーチェインバー(DIK-7001: Daiki co. Ltd., PMS1000: PMS instrument co.)を用いて行った。p_---_v曲線を求める際には、サンプルを30時間吸水させた場合と、吸水させない場合の二つの方法で行い、結果を比較した。今回測定した大部分の樹種では夜明け前及び日中の木部圧ポテンシャルはそれぞれ_1.0 及び _2.5 Mpaよりも低く、延安周辺の樹木は強い水ストレス条件下に生育していることが明らかとなった。夜明け前、日中ともに木部圧ポテンシャルが最も低かったのは Syringa oblata であり、日中の平均値で木部圧ポテンシャルは_---_4.02Mpaという値を示した。高木である、ニセアカシアやリョウトウナラの木部圧ポテンシャルは低木にくらべ高い値を示した。p_---_v曲線法により求められた乾燥耐性に関わるパラメータの中で、膨圧喪失時のポテンシャルについて、30時間吸水を行ったサンプルと無吸水のサンプルを比べると、吸水を行わないサンプルで膨圧を喪失する時のポテンシャルが低下した。この傾向はSyringa,Armeniaca, Rosa, Caragana 等の低木で顕著であり、より強い乾燥ストレス条件下で生育している樹木で強い浸透調節が行われていることが示唆された。

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© 2004 日本林学会
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