日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3062
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動物
沖縄島におけるリュウキュウマツ材線虫病の流行様式 V.
野外でのマツノマダラカミキリ成虫の発生消長とマツの発病経過
*森 高亀山 統一伊禮 英毅宮城 健喜友名 朝次具志堅 允一中平 康子中村 克典秋庭 満輝佐橋 憲生石原 誠
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抄録

 沖縄島においてリュウキュウマツ(以下マツ)に深刻な被害をもたらしている材線虫病の流行様式の特徴について明らかにすることを目的として、2001年から、沖縄島中部・北部各2ヶ所のマツ林分を調査地として、本病発病・病徴進展と媒介昆虫マツノマダラカミキリ(以下カミキリ)の消長について継続調査し、それらと病原線虫、気象条件などとの関係について検討を進めてきた。本報では、3年間の調査結果にもとづき、沖縄島における本病の発病経過と野外でのカミキリ成虫の発生消長について報告する。 2001年6月に、沖縄島中北部のマツ林4ヶ所(北部:大宜味村根路銘・江洲、中部:石川市伊礼原・恩納村山田)を調査地として選定し、それぞれの調査地内に1ヶ所ずつ、当初健全なマツ生立木が100個体以上入るような毎木調査区を設定した。各調査区の全てのマツ生立木について、4_から_5週ごとに、ポンチ穿孔による付傷部からの樹脂滲出能の測定と針葉の変色等に関する目視調査を行った。調査区内に発生した全てのマツ枯死木から、常法により病原線虫の分離を試みた。 一方、これら4調査地のマツ林内に誘引トラップを各3基設置し、2001年6月から溺死式トラップで、2002年4月からは生け捕り型のトラップとして、カミキリ誘引捕獲消長調査を行った。また、根路銘と伊礼原の両調査地内のマツ林(毎木調査区外)に網室を設置し、2002,2003年の各4,7月に、調査地内からカミキリ幼虫が多数生息しているマツ被害木を伐倒・搬入して、カミキリ成虫の羽化脱出を調査した。網室・トラップで得たカミキリ成虫は、性別・前翅長を記録し、うち生け捕った個体は磨砕して線虫を分離した。 本病の発病・枯死木は全調査区で毎年出現した。枯死木は通年で発生し、春に少なく、夏_から_冬の間に発生のピークを示した。樹脂滲出能低下が始まる時期も通年にわたっていた。沖縄島のマツ林において本病の発病・進展が年間を通じて起こりうることが明らかにされた。さらに、樹脂流出異常や枯死が多発する時期が少雨の時期に一致する傾向も示された。 カミキリ成虫が誘引捕獲された期間は4_から_11月であった。初夏と秋に捕獲頭数のピークを示すことがあり、7_から_8月には捕獲頭数が減少する傾向を示した。このことから、カミキリ成虫の発生に二山型のピークがある可能性も考慮しつつ検討を進めた。その結果、別に報告する(伊禮ら(2004))ように、網室でのカミキリの羽化脱出期間は4月下旬_から_8月中旬であり、形態や発生時期の異なる集団の存在は認められなかった。また、誘引捕獲頭数の減少する時期は、同じ調査地で本病発病木が多発する時期と重なっており、この時期には、林内の枯死木の発散する揮発成分との競合によって、誘引剤の効果が相対的に低下していることが推察された。そこで、4月_から_11月の期間を通じてカミキリ成虫は野外で活動し、本病の流行過程に関与しているものと考えられた。すなわち、九州など日本本土の温暖地域と比較しても、カミキリ成虫の活動期間は早く始まり、長く続くことが明らかにされた。

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© 2004 日本林学会
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