日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3063
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動物
桜島のマツ材線虫病
被害拡大のメカニズムについての一考察
*高尾 悦子曽根 晃一畑 邦彦佐藤 嘉一中村 克典
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抄録

 鹿児島県桜島では1994年に新たにマツ材線虫病の被害が確認されて以降、急激に被害地域が拡大し、それにともなってクロマツ枯損量も2万立米にせまっている。島内での急激な被害の拡大もメカニズムを明らかにするために、2002年と2003年に、島内の被害歴と被害程度の異なる3つのクロマツ林分で、マツノマダラカミキリの成虫の標識再捕調査を実施した。いずれの年も、生け捕り用に改良したサンケイ式昆虫誘引器15器または10器を、10mから20m間隔で高さ5mから12mのクロマツの枝に吊し、成虫か捕獲できなくなるまで、毎週2回ずつトラップをチェックした。捕獲した成虫は上翅にペンキで番号を付け、捕獲したクロマツの樹幹または新梢に放逐した。誘引剤のエタノールとα_-_ピネンは2週間おきに交換した。<BR> 総捕獲頭数は、被害が非常に激しく、林冠が疎開していた林分(黒神溶岩)でトラップあたり焼く20頭で、他の中程度の被害発生林分(碩原)とほとんど被害が発生していない林分(湯の平)のトラップあたり10頭より多かった。捕獲数は、ギャップや林道に面したトラップで多かった。再捕率は碩原が0.078、黒神溶岩が0.0035、湯の平が0.012で、碩原が最も高く、碩原で捕獲された成虫は、他の場所で捕獲された成虫に比べ、移動・分散性が低いのではないかと考えられた。放逐後の成虫の行動も調査地間で差が見られた。捕獲数が多く、林冠が疎開していた黒神溶岩では、成虫は樹幹を活発に上部へ移動し、飛び去る個体も多く観察された。一方、林冠の疎開度は低く、再捕率が高かった碩原では、放逐個体は樹幹や新梢で静止していく場合が多かった。これらのことから、被害が進行し、林冠の疎開度や成虫の生息密度があるレベル以上になると、成虫の移動・分散制が増し、被害地が急激に拡大する可能性が考えられた。

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© 2004 日本林学会
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