日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3132
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立地
樹木葉内の微量元素含有量
愛知県内3地点の二次林において
*金谷 正太郎竹中 千里
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抄録

樹木葉内における微量元素含有量_-_名古屋市近郊二次林3地点において_-_○ 金谷正太郎、竹中千里(名大院生命農) 1. はじめに古くから植物にとって必要不可欠な元素の特定の研究が行われてきた。その結果、現在では16種類の元素が植物の必須元素として認められている。その中でも植物が多量に必要とする元素は多量元素と呼ばれ、様々な研究が行われてきた。これに対し、植物の要求量は先の元素と比べ微量ではあるものの、必須元素である元素は微量元素と呼ばれ、近年特に注目を集めている。 樹木に関する元素の研究は、各元素の生理的役割や過剰害などの解明に関するものや、大気や土壌汚染と重金属元素との関係、また森林内の物質循環などに関する研究など、様々な分野に渡って行われている。しかしこれらの研究で扱う元素の種類は、数種類に限られており、一度に多くの元素を対象とする事は少なく、各樹種の元素含有量を調べた基礎的なデータもほとんどない。また様々なストレス実験により各元素間に相関関係が存在するのではないかと思われるデータは存在するものの、それに焦点を当てた研究はほとんど行われていない。 本研究では数種の樹木葉内と土壌の様々な元素含有量を調べ、基礎データを蓄積し、季節変化などから樹種特性、地域差を明らかにし、樹木葉内の元素含有量がどのような影響を受け変化するのかを明らかにすることを目的とする。2. 材料と方法対象樹木は名古屋市内及び近郊の二次林3地点(名古屋大学内、昭和の森、トヨタフォレスタヒルズ)より、ヒサカキ(Eurya japonica Thunb)、コナラ(Quercus serrata Thunb)、アラカシ(Quercus glauca Thunb)、アカマツ(Pinus densiflora Sieb. Zucc)、タカノツメ(Evodiopanax innovans Sieb. et Zucc)の5樹種とした。1樹種に対し5個体ずつ選び、その葉を2003年4月から12月にかけて毎月採取した。採取位置は採取位置高枝切りバサミ(3m)が届く範囲内で、各葉の環境条件を統一するため太陽光の当たりにくい陰葉で統一した。アラカシとヒサカキについては当年葉と旧年葉を採取した。また葉の採取と同時に土壌(A層)を林内5箇所より採取した。採取した葉は蒸留水200mlで3分間振とうし、表面のゴミ等を洗浄除去した後、80℃48時間で乾燥させ1試料当たり3枚の葉を使い、細切化しよく振り混ぜ葉全体を均等になるようにした後、約0.1g測りとり、硝酸分解しICPにて各元素濃度(18種類)を測定した。採取した土壌は2mmのふるいにかけ風乾し、塩酸抽出法・酢酸抽出法・水抽出法にて抽出した後、それぞれ葉と同様にICPを用いて各元素濃度を得た。3. 結果と考察 葉内元素分析の結果より、去年の報告と同様、いずれの地点のヒサカキには当年葉旧年葉共に、非常に高濃度のAl(約10mg/g)が蓄積されていた。また、いずれの地点のタカノツメにおけるCd、Zn含有量はCd(約1.5μg/g)、Zn(約300μg/g)で、他樹種のCd(ほとんどの樹種で検出されず)Zn(約20μg/g、コナラ)と比べ多く蓄積されていた。このことからタカノツメは他樹種とは異なる養分吸収を行っていることが示唆された。 ヒサカキ・アラカシの当年葉と旧年葉ではいずれの地点においても、Al, Fe, Mn, Ca, Siでは当年葉より旧年葉の方が多く含まれている傾向が、Cu, K, Mg, P, Sでは当年葉の方が旧年葉より多く含まれている傾向が見られた。このことから樹木体内の元素配分は当年葉と旧年葉では異なることが示唆された。 同樹種における地点別の葉内元素において、Mnでは地域差が見られたが、他の元素ではいずれの樹種においても大きな地域差は見られなかった。

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© 2004 日本林学会
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