日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3134
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大気汚染に対する都市林の効果
NO2測定結果
*栗田 直明岩本 則長山田 利博竹崎 靖一前田 暢子古田島 正男
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抄録

大気汚染は酸性雨や光化学スモッグの原因となり、人体にも悪影響を及ぼし大きな問題となっている。その原因となるのが、主として車の排気ガスなどにより発生する窒素酸化物(主としてNO2)や、主に工場の煙から発生する硫黄酸化物(主としてSO2)である。最近ではSO2は減少傾向にあるが、NO2の発生量は依然として多く、大きな問題となっている。東京大学演習林田無試験地(以下、演習林)は、住宅地、幹線道路等に囲まれた中にある貴重な都市林である。演者らは1993年から演習林内、演習林外のNO2の測定を天谷式簡易測定法を用い月1回行っている。今回これらの測定データを解析し、(1)演習林内と演習林外(付近の緑地、道路、住宅地)でNO2濃度とその経時変化、季節変化にどのような違いがみられるか、(2)演習林内での場所による違いを明らかにし、樹林がNO2に対してどのような効果を及ぼしているかを考察した。解析方法として、演習林内25地点、演習林外49地点(緑地10地点、幹線道路18地点、生活道路6地点、住宅地15地点の4グループ)の計74地点について測定した。今回はその中から演習林内は林内の環境に応じて8地点(自然林、農場との境界、改良ポプラ林、ヒノキモデル林分、北側壁沿、天然生ヒノキ植栽林、アカマツ疎林、苗畑内露場)、演習林外は位置的バランスを考慮して19地点(緑地5地点、幹線道路7地点、生活道路3地点、住宅地4地点)の計27地点を選び1995年_から_2003年までの測定結果をまとめた。今回のNO2濃度の解析で、グループ別に見ると、道路で高く、中でも幹線道路沿いが高かった。また、演習林内がもっとも低く、緑地も低い値を示した。演習林内では、自然林内で低い傾向があった。季節変化についてみるとグループ間あるいはグループ内に共通する明瞭なパターンは認められなかったが、道路では変動が大きかった。経年変化については、どのグループでも増減は認められなかった。以上のことから演習林の樹林が安定的に低NO2濃度に寄与しているのではないかと考えられる。

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© 2004 日本林学会
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