日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P4032
会議情報

育種
暗色枝枯病菌を接種したスギ苗木の木部病変部の拡大に及ぼす水ストレスの影響
*山田 利博大和 万里子林 芳武中西 友子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

水ストレスが、暗色枝枯病菌を接種したスギ苗木の材内病変部の進展に及ぼす影響を中性子ラジオグラフィ法で調べた。2年生スギ実生苗木を鉢植えにし、土壌(バーミキュライト_-_パーライト)水分を調整し、病原菌(強病原力菌株MA7、弱病原力菌株MA21)を有傷接種した。土壌含水率は湿潤区は300%(W/W)、乾燥区は150 %とした。接種1および7日後に苗木に熱中性子線を照射し、イメージングプレートを使用してラジオグラフィ像を得た。接種時の苗木の水ポテンシャルは、乾燥区は平均-1.47MPa、湿潤区は平均-0.71MPaと両者で大幅に異なった。病変部は乾燥区では時間の経過と共に広がる傾向を示したが、湿潤区ではMA7接種を含めほとんど拡大しなかった。接種の1日後では乾燥区と湿潤区との間で病変部の大きさに差異がなかったが、7日後になると顕著な差異が認められ、水ストレス下で病変部の拡大が大きくなることが示された。MA7接種湿潤区よりMA21接種乾燥区の方が病変部が大きく、菌の病原力の違いよりも水ストレスの方が病変部の拡大に及ぼす影響が大きいと考えられた。接種1日後では乾燥区と湿潤区とで菌接種、傷対照の場合とも病変部の大きさに差異がみられなかったことから、水ストレス下で病変部(乾燥帯)が大きくなるのは、接種孔から空気が侵入する物理的な力よりも、菌と宿主との相互作用のためであると考えられた。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top