日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P4075
会議情報

防災
2003年台風10号による厚別川流域の森林被害
*浅井 達弘寺澤 和彦佐藤 創対馬 俊之
著者情報
キーワード: 台風, 流木, 山腹崩壊, 河畔林
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

はじめに
平成15年8月9、10日に北海道に上陸した台風10号に伴う集中豪雨は、日高・十勝地方に大きな災害をもたらした。特に日高地方では、流木による被害が甚大であり、本道の森林づくりに対して多くの課題を残した。今回、最も流木被害が大きかった日高支庁管内の厚別川流域において流木の発生や山腹崩壊、河畔林流出等の実態を調査したので報告する。
調査流域の概要と調査方法
厚別川は流域面積が約29,000haであり、その約8割(23,000ha)を森林が占める。所管別内訳は国有林が全体の7割、民有林が3割である。林種別内訳は人工林が全体の28%、天然林が68%である。森林被害や流木の流出・堆積状況が異なることから、厚別川流域を厚別川本流の上_から_中流域、中_から_下流域、里平川、比宇川、元神部川の5流域に区分して調査した。
山腹崩壊面積は、被害前後の空中写真の比較、すなわち、被害後の崩壊面積から被害前のそれを減じることにより推定した。ただし、被害後の空中写真の入手が4_から_5割にとどまった比宇川と元神部川流域については、入手部分の国有林、民有林の崩壊面積率(森林面積に対する崩壊地面積の比)と未入手部分のそれらの値が同じと仮定して算出した。被害材積は、山腹崩壊面積に森林調査簿から求めた1ha当たりの平均蓄積(流域区分別、所管別)を乗じて算出した。
河畔林の流出面積・材積は、被害前後の空中写真の比較と現地調査(写真上の消失、倒伏林分の確認・照合と残存林分の毎木調査)により推定した。
流木の堆積量は、現地調査により流木群の分布状態を記録することと、流木群のかさを計り、水平方向と垂直方向の歩留まりをかけることにより推定・算出した。同時に、流木の新旧や樹種の同定などを行った。
結果と考察
山腹崩壊による森林被害面積は396ha、崩壊面積率は1.7%(国有林1.8%、民有林1.4%)、被害材積は57,000m3であった。被害の大きい里平川と本流(上_から_中流域)では民有林の被害も大きかった。河畔林の流出材積は7,800m3であり、本流(中_から_下流域)と本流(上_から_中流域)で被害が大きかった。流木の堆積量は46,000m3(新34,000m3、旧12,000m3)であり、里平川と本流(上_から_中流域)で堆積量が多く、本流(中_から_下流域)で旧流木の占める割合が高かった。
山腹崩壊材積と流木堆積量の流域別の順位は、本流(中_から_下流域)を除くと、一致する。さらに、山腹崩壊材積に河畔林流出材積を加えると、その順位は流木堆積量の順位と完全に一致する。これらのことから、大きな被害をもたらした流木の主要な発生源は山腹崩壊であり、河畔林流出は副次的な発生源と考える。
流域を閉鎖系と仮定して、流木発生源(山腹崩壊と河畔林流出)の材積から今回の大雨で新たに流木になった新流木の材積を減じた値を算出した。この値は山腹崩壊材積のうち林地等に残留する材積を示唆する。流域合計では山腹崩壊材積の54%に相当する31,000m3が小渓流や山腹に残留しているものと推察される。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top