抄録
降雨の多くが土層下の基岩内部へ浸透し、一部は湧水として再び地表に復帰する。だが基岩内部を介した湧水は独特の降雨応答特性と集水域を持ち、分布も局所的なため流出・崩壊予測への適用が非常に難しい。本研究では森林流域において湧水を含む斜面内水文過程を詳細に観測し、知見を得ることを目的とした。
京都大学防災研究所穂高砂防観測所ヒル谷試験流域の谷壁斜面末端部に約57m2の観測エリアを設定した。土層内にテンシオメータを114本設置し、土壌間隙水圧(ψ)を継続的に観測した。さらに末端部でトレンチ流量を観測した。
観測エリア内の点B5において、無降雨時・降雨時を通じて基岩面から上向きフラックスを伴った飽和帯が発生し、土層内を流下する様子が観測された。さらにB5のψ波形は大降雨にのみ反応して緩やかな上昇を示したことから、岩盤地下水の湧出が推察された。またこの波形はトレンチ流量の基底流波形と強い二次相関関係を示し、B5から湧出した岩盤地下水が斜面の基底流を形成していることが示唆された。B5のψ波形から湧水量を推定しトレンチ流量から分離したところ、流量全体のうち約90%が湧水によって占められていることがわかった。