抄録
従来の森林水文学では,雨水の土層内における浸透や貯留と,それに伴う溶質移動に重きをおいた研究が精力的に行われてきた。その一方で,雨水の一部が土層-基岩境界面を通過して山体内部に深部浸透することも指摘されてきたが,この成分は単に水収支上の損失項として扱われ,山地小流域の降雨流出プロセスにおいてそれ以上の影響は及ぼさない,と考えられることが多かった。しかしながらここ10年程の期間に,日本各地の山地小流域で実施された詳細な水文・水質観測によって,実際の基岩浸透量はかなり多く,さらに一端基岩浸透した成分が流域内部で土層内に湧出し,ハイドログラフの形状や水質形成に多大な影響を及ぼすことが明らかにされてきている。但し既往研究の多くは,流出ハイドログラフ,水温,水質,同位体等のデータを基に,山体地下水の寄与の大きさを推定した段階にあり,山体地下水の賦存量,動態,水質等を直接計測した研究は,国内外を問わず極めて限られている。本発表では,大起伏の花崗岩山地源流域において高密度に掘削された調査ボーリング孔網を用い,山体地下水の水文・水質動態解明を行った研究成果を報告する。